[原子力産業新聞] 2003年5月22日 第2186号 <3面>

[欧州委員会] ITER候補地を一本化へ

 欧州委員会(EC)のP・ビュスカン研究開発担当委員は13日、欧州連合(EU)閣僚理事会に対して国際熱核融合実験炉(ITER)計画のサイト選定作業の交渉状況を報告し、「欧州連合(EU)域内への誘致を成功させるため、年末の国際協議に向けてECとしては欧州の候補地を1か所に絞り込む計画である」と説明した。

 現在ITER計画では、カナダのクラリントンと日本の六ヶ所村のほか、欧州からフランスのカダラッシュとスペインのヴァンデロスがサイト候補地として正式に提案されており、年末までにサイト選定や費用の負担など運転段階の項目に関する国際協議に決着が付く見通し。ビュスカン委員は、この協議の場で欧州へのITER誘致にとって最高のコンディションを整えるため、EUは候補地を一本化しなければならないと指摘。候補地を絞り込む上でのあらゆる側面を考慮し、ECは技術的な面で支援を得られるよう高度な知識を有する専門家のグループを設置することになったと説明した。

 また、欧州内での合意形成を促進するため、フランスとスペインに対しては二国間で協議するよう促すほか、EUとしては関係国の当局と直接協議・協力して、純粋に技術的な側面以外の部分を考慮した合意形成に関して課題を特定していくとしている。

 ECはさらに、5月末をメドにサイトとしての準備状況や科学的、技術的な点について客観的な基準を設定する計画だ。これらには特に、候補地およびその周辺区域の準備が期限内に整うこと、関連する規制当局が必要な認可を適時に発給可能であることなど、社会環境的な側面、政治的、財政的、行政的な保証が含まれるとしている。これらの基準設定においては、加盟各国の合意が基本となる。

 この後の段階について同委員は、ITER誘致のための条件整備を目的とした専門的知見の利用に移ると説明。ECとしては科学者達に諮問を要請するものの、最終的なコンセンサスはおそらく、サイト選定や国家間のコストと責任分担に関する政府高官レベルの合意に基づくことになるとの見方を示した。この合意は9月末までの形成を目標としており、ITER合意案をまとめる目標期限の年末にはEUとしての提案を提出することになる。


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