[原子力産業新聞] 2003年5月29日 第2187号 <1面>

[文科省] 廃炉・廃棄物処理処分に2兆円

 文部科学省は23日午後、東京霞ヶ関で第13回原子力二法人統合準備会議(座長=渡海副大臣)を開いた。会合では新法人の経営基盤を左右するといわれる既存原子力施設の廃止措置および放射性廃棄物の処理処分の費用について、総額2兆円、実施期間約80年との見積りを示し、このため年間100億円〜300億円が必要だが新法人の財務能力の範囲内で可能との見通しを示した。また、研究施設の整理の一環として、材料試験炉JMTR等の廃止の方針も出された。

 23日の会合では、統合二法人に関係する機関として、藤家原子力委員長が、今月20日に委員会決定した「日本原子力研究所及び核燃料サイクル開発機構の廃止・統合と独立行政法人化に向けての横断的事項に関する方針」と「原子力委員会の関与について」(本紙5月22日号2面参照)を説明、新法人を「難しさに挑戦する組織」「成果の出やすい組織」にしてもらいたいと要望した。続いて経済産業省資源エネルギー庁の原山原子力政策課長が、統合法人の主要業務の目的の明確化と、統合法人と主要事業に対する政府関係機関の関与のあり方を整理する必要があると述べた。

 秋山委員を中心に、原研とサイクル機構に現存する原子力施設の廃止措置と放射性廃棄物の処理処分費用の試算を行った結果、総費用は約2兆円、うち廃止措置費が6000億円、処理費用が5500億円、処分費が6000億円、輸送費が2400億円等(=表)となった。

 実施期間を約80年間とした場合、必要な予算としては、@新法人設立後約10年間は年間100〜150億円A平成27年〜同60年頃までの約30年間は年間約300億円B平成60年〜同90年頃は年間150億円程度――となり(=グラフ)、平成90年半ばに廃止措置と廃棄物の処理処分が終わるとしている。文科省は、二法人の合計年間予算が2300億円であることから、この5〜15%程度で、経営努力によって対処可能としている。

 この見積りに対して委員からは、今後、国際熱核融合実験炉(ITER)などの大型プロジェクトが無いことを前提とするのは危険との指摘、廃止措置・廃棄物とそれ以外の事業との会計を分け、透明性を保ちつつ、国の責任で行うよう設立法に明記すべき、今後80年間現在と同じ予算が確保できるとの前提は甘すぎるなどの意見が寄せられた。

 文科省はまた、二法人の研究施設の整理・合理化を発表、材料試験炉JMTRや核融合装置JFT−2M等の廃止を打ち出した。委員からは、材料試験ができる炉を確保することが重要などとの意見が出された。

 文科省は、秋に向け新法人設立の立法作業に入る時期としており、次回の準備会議は6月19日の予定。


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