[原子力産業新聞] 2003年5月29日 第2187号 <4面>

[原子力関連40学協会] 原子力総合シンポ開催

 原子力関連の40学協会共同主催による「第41回原子力総合シンポジウム」が21、22日の両日、東京・港区の内幸町ホールで開催された。「新時代を切り拓く原子力の取り組み−信頼される科学技術として」を主調テーマに、「信頼される技術としての原子力」、「循環型社会における燃料サイクル技術」、「21世紀のエネルギー需給と原子力」、「次世代を切り拓くエンジニアの育成」についての講演が行われた。また招待講演として、初日に藤家洋一・原子力委員長が「新時代に求められる原子力科学技術の展望」、また2日目に松浦祥次郎・原子力安全委員長が「原子力安全委員会の変遷−事故事象、トラブルへの対応を通じ」についてそれぞれ講演を行った。

 2日目の「次世代を切り拓くエンジニアの育成」では、原子力開発を支える優れた人材の育成をめぐり講演とパネル討論が行われた。このなかで、なぜいまプロが必要なのかについて講演した工学院大学の大橋秀雄理事長は、高い専門性と倫理を兼ね備えたプロの人材育成に、大学の役割が重要との考えを示し、特に高度な学問を支える人材の育成をめざすという大学のニーズの一方で、プロジェクトとして社会のなかで重要な役割を果たすための基礎力を養おうとする学生のニーズにギャップが生じている点を指摘。学生のニーズにも適合した形で、一貫した能力開発システムを構築していくことの重要性などを強調した。

 また、技術士資格に原子力・放射線部門を新設する取り組みについて、班目春樹東大院教授が講演、来年度から同部門の認定試験がスタートすることになるとの見通しを示した上で、今後、優れた人材の確保はもちろん、技術士資格者が原子力発電所の運転等の現場をリードしていくことを一般国民にもわかりやすくなる等の効果があると、その意義を述べた。一方で、今後どう活用していくのかについては答えがでておらず、産業界等の真剣な議論を期待するとした。

 講演の後に行われたパネル討論では、技術者の倫理教育を含めて今後の人材の養成のあり方をめぐり、会場参加者も交え、熱のこもった議論が行われた。このなかで、パネリストとして参加した児嶋眞平福井大学学長は、同大学に原子力・エネルギー安全工学専攻(仮称)を新設する構想に関して発言した。同氏は地元研究機関等との協力により加速器施設等のインフラも利用して、安全工学の専門講座を設けるため、来年度にも新設する方向で文部科学省や地元の福井県などとの話し合いを進めているとした。


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