[原子力産業新聞] 2003年6月19日 第2190号 <1面>

[IAEA] 理事会が開幕 イラン核問題等を討議

 国際原子力機関(IAEA)の6月理事会が16日、5日間の日程でウィーンのIAEA本部で始まり、IAEAに未申告の核開発疑惑が持たれているイラン問題等について、議論が行われている。IAEAは6日、イランにおけるIAEA保障措置の現状に関する非公開報告書を、315の理事国に送付している。

 エルバラダイ事務局長は理事会の冒頭演説で、イランにおける保障措置の実施状況について報告、「イランはある種の核物質と活動を、IAEAに報告するのを怠った」とし、イラン当局と協力してこれを修正中と述べた。また、通常の査察と並行して、環境サンプルの分析も進めていることを明らかにした。環境サンプリングは、土壌、土、植物等に含まれるウラン等を同位体分析し、ウラン濃縮活動等、機微な活動が行われているかどうか判定する技術。

 同事務局長は、イランのウラン転換・濃縮活動や重水の利用法も含め、同国の原子力計画全体を把握する努力を行っているとした。イランが重水製造計画を進めていることは知られていたが、重水を利用する計画がなかったことが疑惑を呼んでおり、5月にイランの当局者がIAEAに重水炉建設計画を説明したとの報道もある。

 エルバラダイ事務局長はイランに対して、早期に保障措置追加議定書を結ぶように呼びかけ、また、濃縮活動が行われているのではないかと疑われている特定の施設で、環境サンプルの採取を認めるよう求めた。

 同事務局長は保障措置追加議定書の締結状況についても報告、IAEA理事会が承認した追加議定書が80に達したものの、追加議定書が発効したのは315か国にすぎず、また、核不拡散条約(NPT)加盟国のうちIAEAと保障措置協定を結んでいない国が416か国にのぼると指摘した。

 NPTにもとづくフルスコープ・セーフガードと、追加議定書による保障措置を統合した「統合保障措置」については、現在、オーストラリアとノルウェーで実施中とし、日本、カナダ、ハンガリーなど大規模な原子力計画を持つ国での実施を計画中だと述べた。

 国内の関係者によると、低濃縮ウランを使う日本国内の原子力施設では、2004年1月から、ほぼ「統合保障措置」に移行する予定であり、各原子力施設での査察頻度が劇的に減ることが期待されている。


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