[原子力産業新聞] 2003年6月26日 第2191号 <1面>

[文科省] 原子力二法人統合会議 報告書起草に向け議論

 文部科学省は19日、東京・港区の中央官庁合同会議所で第14回原子力二法人統合準備会議を開いた。会議では松浦祥次郎・原子力安全委員長から統合へ向けての要望を聞くとともに、この夏の最終報告取りまとめに向けて、これまでの議論を踏まえ主要論点を整理、施設の廃止措置等が新法人の主要業務として新たに位置づけられた。

 会議ではまず、松浦原子力安全委員長が、同日付で委員会決定した「日本原子力研究所及び核燃料サイクル開発機構の廃止・統合と独立行政法人化の制度設計にあたり、国の原子力の安全確保に関する基本に関わる観点から考慮すべき事項について」にもとづき、説明した。

 この中で同委員長は、新法人が「総合的に安全研究を実施すべき」とし、具体的には、@国の安全規制からの要求に応え規制活動への支援と規制政策に資する研究A事故・故障の評価研究B施設の不安全要素の検出・分析・評価に関する研究C放射性廃棄物処理処分の安全性及び防災対策の研究――などの着実な推進を求めた。また、これらの研究の実施形態やプロセスが「十分な中立性と透明性を持ち、信頼性の高いことが必要」と強調した。

 このような研究を支えるため、新法人が人的・基盤、研究施設等の研究基盤を継続的に維持・強化する必要があるとし、「既存研究施設の整理・合理化にあたっては、代替機能の確保に特段の留意をする必要がある」としている。また、新法人の中期目標の策定等にあたっては、あらかじめ原子力安全委員会の意見を聞くとともに、中期目標を安全委の安全研究年次計画にもとづき策定するよう求めた。

 安全委の要望については、委員の間から「老朽化で廃止の必要な施設もあるが、代替施設をどうするかの議論なしに廃止を決めるのは問題」、「新法人が、痛めつけられ矮小化した、気迫のない研究所にならないか」などの懸念の声が寄せられた。

 この後、秋山委員が中心になって取りまとめた「原子力二法人統合に関わる主要論点について」を事務局が説明、新法人の主要業務として「自らの施設の廃止措置と放射性廃棄物の処理処分」が、今回新たに付け加えられた。また、今後関係方面との調整を要する主な事項としては、累積欠損金の減資、原子力安全規制上の地位の継承、原子力委員会の作る原子力政策の中期目標等への反映等をあげている。

 「主要論点」について委員からは、主要業務に廃棄物処理処分が入ったのは評価できるので設立法に書き込んでほしいとの要望、国際協力・貢献により世界のセンター・オブ・エクセレンスとなることを目指すべきとの意見、JMTR廃止後の代替施設案がないなど、理念に比べて具体策のレベルが落ちるなどの指摘等があった。

 文科省は、これまでの議論を踏まえて最終報告書の取りまとめに入りたいとしており、次回会合までに、秋山委員を中心に起草することとなった。


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