[原子力産業新聞] 2003年6月26日 第2191号 <1面>

[IAEA] 保障措置報告書公表

 国際原子力機関(IAEA)は20日、イランにおける核不拡散条約(NPT)保障措置実施の現状に関する報告書を公表、イランが1991年に合計1.8トンもの天然ウランを輸入した際、IAEAに申告しないなど、保障措置協定違反があったと結論づけた。この報告書は、十六日から始まったIAEA理事会に先立ち、各理事国に送付されたもので、これまで非公開とされていた。

 同報告書は、「イランは保障措置協定上の義務を遵守しなかった」理由として、@1991年に天然ウランを輸入、加工のため移転した際、IAEAへ未申告(2003年四月に申告)A上記輸入天然ウランの加工・利用等の活動の未申告B上記輸入天然ウランの受領・保管・加工施設の未申告Cテヘラン研究炉等の最新設計情報を適時にIAEAに通報せずD二か所の廃棄物貯蔵所の情報を適時にIAEAに通報せず――などを指摘している。IAEAは、これらの問題を解決中としつつも、「イランによる協定違反の回数の多さを懸念している」と述べた。

 IAEAは未解決の問題として、@イランのウラン濃縮活動の研究・開発(遠心分離法とレーザー濃縮法)に関する専門家による分析Aカライ電気会社等における未申告の濃縮活動の調査と環境サンプリングBイランの核燃料サイクルにおける金属ウランの用途の調査C重水の製造や重水炉の設計・建設等の重水利用に関わる計画――をあげている。報告書はこの上で、イランが保障措置追加議定書を早期に締結するよう、重ねて求めている。

 IAEAが最も問題視しているのは、1991年にイランが大量の天然ウランを輸入していたことが、最近、輸出国側から明らかになったことだ。イランはこれを今年2月までIAEAに通告しなかった。未申告の輸入天然ウランは、UF6の形で1000キログラム、UF4で400キログラム、UO2で400キログラムにのぼる。また、今年2月まで、ナタンツにある完成間近の濃縮パイロット・プラント(PEEP)と建設中の商業規模の濃縮工場の存在を明らかにしていなかった。更に、重水製造計画について今年6月まで、熱出力40MWの重水研究炉(IR−40)建設計画についても5月まで明らかにしていなかった。(本報告書の詳細を7月10日号に掲載予定)


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