[原子力産業新聞] 2003年7月3日 第2192号 <1面>

[むつ市] 市長が中間貯蔵誘致表明

 原子力発電所から出る使用済み核燃料をめぐり、東京電力が青森県むつ市に計画している「リサイクル燃料備蓄センター」(=下図)について、同市の杉山粛市長は6月26日、市議会で施設の誘致を正式に表明した。使用済み燃料の貯蔵施設を、自治体が誘致するのは全国初のこと。

 杉山市長の誘致表明は、むつ市議会が6月17日、「立地は可能」とする同市特別委員会の報告を賛成多数で了承したことを受けてのことで、杉山市長は「地域の活性化につながる」ことを、誘致の最大の理由として挙げている。

 むつ市は2000年11月、東京電力に対して、使用済み燃料中間貯蔵施設「リサイクル燃料備蓄センター」の立地に係わる技術調査(立地可能性調査)を依頼。これを受けた東電では、01年1月にむつ市に事業所を開設し立地調査を開始し、今年4月に立地は可能とする調査結果を報告していた。

 一方むつ市でも、施設立地の可能性を調査する調査特別委員会(馬場重利委員長)を設置し調査を実施。「立地は可能」との委員長報告を取りまとめており、6月17日には同市議会が、賛成多数で了承している。

 東電の計画では「リサイクル燃料備蓄センター」は、同社が中心となり他の電力会社の参画を得て、共同で新たに設立する貯蔵・管理会社が、国から貯蔵事業の許可を得て施設の建設を行うとともに、事業を運営する。操業時期については「2010年までに開始したいが、地元のご理解を得ながら、できるだけ早期の操業開始を目指す」としており、当初は3000トン規模の貯蔵建屋を1棟建設し、その後2棟目を建設。建設工事期間は、1棟当たり約3年を見込んでいる。

 使用済み燃料は建屋内にキャスクで貯蔵され、搬入については、年間約200〜300トンを年4回程度に分けて実施。最終的な貯蔵量は、5000〜6000トン程度を見込んでいる。なお施設ごとの使用期間は、各々の建屋について約50年(キャスクごとにおいても最長50年)とし、操業開始後40年目までに、貯蔵した使用済み燃料の搬出について、協議をして行く方針だ。

 勝又恒久東京電力社長は、「むつ市議会でご審査をいただき、このたび市長より正式に誘致のご表明があったことは、誠に有り難く、市長をはじめ、市議会、市ご当局等関係の方々、むつ市の皆様に、深く感謝申し上げる次第だ。今後とも『リサイクル燃料備蓄センター』の実現に向けて、地域の皆様により一層ご理解をいただけるよう努めてまいる」とのコメントを発表した。

経済相「強力に支援」と歓迎

 杉山粛むつ市長の、使用済み燃料中間貯蔵施設誘致表明を受け、平沼赳夫経済産業大臣は、「施設立地に向けての一定の前進が示されたものだと受けとめている」との認識を示した。

 同相は、経済省としても今後「立地が円滑に進められるよう、施設の必要性や核燃料サイクル政策上の位置づけ等について、国民、住民の視点に立ってわかりやすく説明をして、地域のご理解を得ていきたいと思っている」と、強力にバックアップしていく方針であることを表明した。


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