[原子力産業新聞] 2003年7月17日 第2194号 <2面>

[原産] 原産が原潜解体で説明会

日本原子力産業会議は、14日と17日、ロシアから4名の専門家を招き、ロシア極東地域における原子力潜水艦解体および海洋等汚染の現状を聞く説明会を開催(=写真)、約50名が参加した。

14日には「旧ソ連の海洋放射線影響―負の遺産」と題して、原潜の設計等を行ってきた中央設計局のS.A.ラフコフスキー局長が講演、ロシアの退役原潜問題は「ロシアだけの問題ではない」と述べ、海洋汚染源として、@係留してある退役原潜A海洋投棄された放射性廃棄物B解体され原子炉区画が隔離された原潜――を挙げた。極東には核燃料を積んだまま沈没している原潜はないものの、退役後23年経ったものが未だに係留されており、なかには沈没しないように船首を引っ張り上げたり、ポリスチロールを充填するなどの措置がとられているものもあると述べた。

ラフコフスキー局長はさらに、退役原潜解体技術と作業施設、および発生する放射性廃棄物についても説明、解体方法について、最終的には原子炉区画のみを切り離して陸上貯蔵を目指すものの、貯蔵施設等がないため、当面、原子炉および前後の隣接部の3区画を切り離し、シールドしたのちに海上に浮かせて貯蔵する方法を取るとした。この場合、15年ごとに引き上げて清掃・塗装が必要なので、あくまでも最終貯蔵のめどが立つまでの「中間的な処置」とした。

解体時に発生する放射性廃棄物については、原潜1隻あたり、固体廃棄物が40立方メートル、液体廃棄物が250〜300立方メートルとし、固体廃棄物は原子炉部分と共に密封・貯蔵し、液体廃棄物は日本の協力で作られた「すずらん丸」等で処理すると述べた。

解体作業上の問題点について、使用済み燃料の抜き取り作業が最も危険で時間のかかる作業だとした上で、ロシア政府は2007年までにすべての退役原潜から使用済み燃料を撤去する計画だとし、このためには毎年7〜8隻の燃料抜き取りが必要であり、さらに問題として、@使用済み燃料キャスクをマヤク再処理工場まで鉄道輸送するための線路補強Aカムチャツカに係留されている原潜19隻のボリショイカーメニにある解体工場までの輸送Bカムチャツカにある3隻の事故原潜の隔離C老朽化し使用済み燃料を積んでいる支援母船の処理――などを挙げた。

カムチャツカにある3隻の事故原潜の状況について中央設計局のコブツェフ副主任設計士が説明、1985年8月に、燃料交換中に原子炉上蓋と共に誤って制御棒を引き抜き、約10名の死者を出した原潜「175号」の事故をはじめ、一次冷却材漏れを起こした他の2隻の原潜の処置方法案を説明した。

「175号」については、原子炉部分をコンクリートで封鎖し係留してあるが、この船首と船尾を切り離したあと、原子炉部分を戦略型原潜の大きな船殻で覆い、内部にコンクリートを詰めて陸上で処分する方法を説明、他の2隻についても、陸上まで運河を掘って曳航し、海水を出したあと固定、盛り土によって「埋葬」する案を説明した。


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