[原子力産業新聞] 2003年7月17日 第2194号 <4面>

[IHI] ゴールデンハドロンアワードを受賞

石川島播磨重工(IHI)がスイスのCERN (欧州合同原子核研究機関)向けに昨年6月に納入した「極低温ヘリウム冷却設備(=写真)」がこのほど、Golden Hadron Award 2003を受賞した。

同賞は、LHC(大型ハドロン加速器)プロジェクトに関わるコントラクターの中で毎年最も功績のある3社にCERNから授与されるもの。

IHIは99年6月に、スイスの大手エンジニアリング会社のリンデ社と共同で、CERNから1.8ケルビンK(マイナス271.35度)ヘリウム冷却設備としては世界最大容量の2.4キロワット「極低温ヘリウム冷却設備」4ユニットを受注しており、今回受賞したのはその内の初ユニット。IHIはこの初ユニット納入後の性能試験で契約仕様を上回る性能で保証値を達成しているが、CERNの過去10年間のヘリウム冷却システムにおいて、保証性能を上回る成果を上げたのはこれが初めてという。

IHIはリンデ社とコンソーシアムを組み、システムの要となるコンプレッサを担当、コンソーシアムリーダーとしてプロジェクト全体をマネジメントし、リンデ社はシステムエンジニアリング、一部機器の調達および据付、試運転を担当している。今回、IHIはプロジェクト全体の遂行能力および極低温ヘリウム冷却設備初ユニットの品質、性能、コスト、納期と併せて、IHIが長年にわたって蓄積してきた低温排気圧縮機の性能が特に高く評価され、同賞の受賞に至った。

CERNでは、現在稼働中の世界最大の大型加速器「LEP」のトンネルを利用して、さらに高レベルの素粒子研究を目指す「 LHC計画」が国際協力のもと、2005年稼動予定で進んでおり、日本政府も905年に同計画への参加を決定している。

加速器に用いられる超電導磁石の性能を向上させて加速エネルギー値の向上を図るには、運転温度を下げる必要があり、「極低温ヘリウム冷却設備」は、この超電導磁石の冷媒である液体ヘリウム温度を下げるために用いられるもの。

IHIでは今回の受賞を大きな弾みとして、極低温ヘリウムコンプレッサのより1層の技術力強化と極低温プラントの受注拡大を目指すとともに、国際コンソシアム等による協調プロジェクトを推進し、国内外向けに積極的な営業展開を図っていく。


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