[原子力産業新聞] 2003年7月24日 第2195号 <2面>

[原研] JRR−3 中性子強度6倍に

日本原子力研究所は、研究炉JRR−3から隣接する実験利用棟へ熱中性子を導く中性子導管の内面に、新開発したNi/Ti多層膜スーパーミラーを用いて、熱中性子ビームの強度を約6倍に増加させることに成功した。

JRR−3では、低エネルギー中性子を原子炉から25〜60メートル離れた各種中性子ビーム実験装置まで導いている。低エネルギー中性子には光と同様に反射する性質があるため内面を鏡面(ミラー)にした導管を用いているが、実験装置での中性子ビーム強度はミラーの反射率に左右される。近年、中性子ビーム実験の需要増加に伴いビーム強度を増強し、個々の実験に要する時間を短縮する必要性が出ていた。

これまで、ニッケルの単層膜を基板表面に着けたミラーを用いていたが、ニッケルとチタンを交互に積層したNi/Ti多層膜スーパーミラーの研究開発を進め、世界最高レベルの反射率を有するスーパーミラー実用化の見通しを得たことから、JRR−3の熱中性子導管(約60メートル×2本)のミラーを今年2月までにNi/Ti多層膜スーパーミラーに改良した。

これにより、熱中性子導管出口の熱中性子ビーム強度が、従来の約6倍になること、中性子ビームを利用できる波長範囲についても従来より約1.7倍広くなることを確認した。


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