[原子力産業新聞] 2003年7月24日 第2195号 <3面>

[DOE、ロシア] 「閉鎖都市」開放で協定

米エネルギー省(DOE)は17日、ロシアとの間で、同国の閉鎖都市を開放する協定に合意したと発表した。これは、シベリアのセベルスクとゼレズノゴルスクにある3基のプルトニウム生産炉を閉鎖し、米国が石炭火力発電所を建設するためのもの。DOEのエイブラハム長官は、「ロシアでの核兵器級プルトニウム生産を中止し、これらの施設を閉鎖することにつながる」と述べている。

この協定は、米ロ間の「兵器級プルトニウム生産中止計画(EWGPP)」の一環として、17日にモスクワで、DOEのエイブラハム長官とロシア原子力省のルミャンツェフ大臣との間で署名されたもの。セベルスクには2基(=写真右下)、ゼレズノゴルスクには1基、旧ソ連時代からのプルトニウム生産炉があり、両市に蒸気と電気を供給している。これらの原子炉は、いずれも軽水冷却黒鉛減速炉で、電気出力は10万キロワット、1964〜65年に運転を開始している。これらの炉は老朽化していることもあり、DOEは、炉に設計、機器、材料の面で欠陥があり、「世界で最もリスクの高い原子炉の1つ」とし、同省のパシフィック・ノースウェスト国立研究所が中心となって、安全性改善と寿命延長を支援してきた。

エイブラハム長官とルミャンツェフ大臣は、今年3月にウィーンで、これら3基の原子炉でのプルトニウム生産を中止する合意文書に署名、原子炉閉鎖のかわりに石炭火力発電所を建設することで合意していた。さらに5月には、DOEは米国の2社に、4億6600万ドル(約555億円)で閉鎖業務を請け負わせることを決めた。今回の合意で、米国の請負業者の閉鎖都市へのアクセスが保証され、作業がスケジュール通りに進められることになったもの。

しかし、まだ未解決の問題もあり、その1つがロシア国内で作業を行う米国企業と労働者の賠償責任問題。

エイブラハム長官は22日、ルミャンツェフ大臣に対して、米企業等に、ロシアの適切な法的保護がかけられない限り、1998年に米ロが結び今年9月に期限が切れる「核都市イニシアティブ(NCI)」を延長しない旨、通告した。同長官は、NCIを延長しなくとも、進行中のプログラムに影響はないとしている。2002年にプーチン大統領は、法的保護を施すために必要な措置を取ると約束している。


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