[原子力産業新聞] 2003年7月24日 第2195号 <4面>

[原産・レポート] 保修をめぐる諸課題

保修技術技能の伝承の仕組み作りとレベル維持

@技術・技能者の高齢化

高齢化が進みつつあり、伝承の仕組みについて考えていく必要がある。

A技能伝承はOJT中心

建設から保修まで現場の技術技能の細かい点は、棒心など人に付いた形となっており、作業者は主にOJTで技術、技能を習得していくが、未経験者が多く教育効果が蓄積しづらい。

B困難さを増すメーカーの人材確保

建設が減っている現在、メーカーでは必要な技術者技能者の質と量の確保が難しくなりつつある。

C特有の技術技能に共通 資格、取扱い資格を

米国のような共通の資格や特定機器の取扱い資格を考える必要がある。

D作業者に一定の技能教育訓練を

協力会社の作業者に対し、一定の技能教育訓練を行なう必要がある

E定着率向上も必要

数の上で多くを占める数次下請の作業者の定着率を向上させ、経験者の割合を多くすることが必要。

米国では、日本より一層高齢化が進み、あと数年で相当数がリタイアするため、世代間に大きな空白が出来ようとしている。技術技能伝承を急ぎ、マニュアルを詳細に作成する一方、OJTでなければ伝えられない点もあると認識。

保修に係わる大量の人数の確保

@少子高齢化時代では困 難となる大量労働者確保

大人数を必要とする保修方式からの転換が必要。

A必要な地元学生の確保

発電所近隣の工業高校の学生数が減少し、人材供給源の対策が必要。

B全体に占める管理者の割合

多層構造に加え、各種のルールなどが管理側の人数を押し上げ、全体の人数が多い割には、実際に作業に携わる人数が少ない。

工事方法の合理化、省力化

@電力会社が現場把握を

工事方法の合理化や省力化の検討を進めるには、電力会社が現場の実態を直接把握することが必要

A人工ベースから作業単位の契約へ

工事を人工数ベースの契約ではなく、作業単位の契約とし、自発的な合理化、効率化を促す必要がある。

B人材を有効利用できる仕組みが必要

工事が縦割りで発注されているため、元請、下請が異なる工事では応援が行われないなど、人材を有効に使える仕組みを。

C契約にも競争原理を

過去の契約実績を見ると、ほとんど同じ契約先が継続的に受注をしている。今後競争が行われるよう環境づくりが必要。

米国では、@作業者に空き時間が生じないよう多能工化し、作業工程や作業者配置を管理する専門マネージャーを置き、プロジェクト管理ツールにより木目細かく労働時間を管理Aアライアンス等でサイト間のルールの統一、ベストプラクティスに合わせるなどの努力B効率化の結果をランキングで発表するなど情報のオープン化C定期検査の外注を数年契約化、ボーナスで従業員の参画意識づけなど効率化のインセンティブを活用Dほとんどの作業で直営が可能なため、価格が安い場合のみ外注など競争原理が働く。

人材の共通活用について

@少数基サイトの方が社員数は多い傾向

定検の内容、改造の手続き、トラブルの説明、地元対応など、基数や出力規模によらず同等のものが要求され、出力当たりの電力会社社員数は、少数基サイトの方が多い傾向がある。

A 移動に消極的な作業者の意識変革を

作業者は出稼ぎや移動的な労働を忌避する傾向となっているが、今後移動についての意識を変えていく必要がある。

B 少なくなる建設経験

最近建設を経験していない電力、メーカー、工事会社では経験者が減少、対策を考える時期に来ている。

米国では、少数基保有電力会社はアライアンスに参加、大規模の電力会社は共通運用の保修要員をプールして移動させながら使用。


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