[原子力産業新聞] 2003年7月31日 第2196号 <1面>

[資源エネ庁] エネ基本計画案を発表

経済産業省・資源エネルギー庁は25日、エネルギー基本計画案を発表、パブリックコメントに付した。同基本計画は、平成14年6月に成立したエネルギー政策基本法に基づいて作成されるもので、総合資源エネルギー調査会・基本計画部会(茅陽一部会長)で審議されてきたもの。

エネルギー政策基本法は「安定供給の確保」、「環境への適合」、および「市場原理の活用」を基本方針として掲げている。同計画案では、成長著しいアジア地域を中心に、今後もエネルギー需要の増加傾向が続くと予測、世界的に中東依存度が高まるとしている。環境への適応については、日本において、温室効果ガスの9割がエネルギー起源の二酸化炭素であることを指摘、非化石エネルギーへの転換などを求めている。

市場原理の活用について同基本計画案は、エネルギー価格の低減を通じ、国民生活の向上や国際競争にさらされている産業の競争力強化に資するとともに、エネルギー産業の体質強化につながるとしている。

原子力については、「多様なエネルギーの開発・導入」として、安定供給や、地球温暖化対策の面で優れているため、「安全性の確保を大前提に基幹電源として推進」するとし、このために、安全性の確保に向けた取組みを引き続き進めるとともに、国民の理解を得るための取組みとして、@情報公開・提供と公聴・広報活動A学校教育での知識の普及B立地地域との共生――などを挙げている。

核燃料サイクルについては、安全性と核不拡散の確保を大前提としつつ、「経済性に留意しながら」進めるとし、長期的観点から、エネルギー情勢、ウラン需給動向、核不拡散政策等を勘案して、「硬直的ではなく、柔軟性を持ちつつ着実に取り組む」としている。また、プルサーマルの実現に向けて「政府一体となって取り組む」こと、高レベル放射性廃棄物については、処分地の選定、最終処分施設の建設に向けた努力を行うとともに、使用済み燃料の中間貯蔵施設への取組を進めるとしている。

電力自由化と原子力発電や核燃料サイクルとの両立については、原子力への投資リスクが大きいため、事業者が投資に慎重になる懸念があるとし、@発電・送電・小売を一体的に行う一般電気事業者制度を維持A広域的な電力流通の円滑化B低需要時に原子力発電からの給電を優先的に認めるC中立・公平・透明な送電線利用ルールの整備D発電用施設周辺地域整備法に基づく支援を原子力発電など長期固定電源に重点化――など環境を整備。

またバックエンド事業についても、事業全般にわたるコスト構造等を分析、その上で、官民の役割分担のあり方、既存の制度との整合性等を整理、平成16年末までに、経済的措置などの具体的な制度・措置の在り方を検討、必要な措置を講ずるとしている。

エネ庁は8月中に東京、仙台等6都市で地方公聴会を開催、9月中に基本計画部会で最終案を固め、閣議決定後、国会報告の予定。


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