[原子力産業新聞] 2003年7月31日 第2196号 <3面>

[米国] 原子力電池用Pu238生産再開

米政府は主に原子力電池の原料として使われ、1980年代半ばに国内生産を中止した放射性物質プルトニウム238の生産を近く再開する方針を決めた。議会関係者が19日、明らかにした。

「国家安全保障上の理由から生産態勢を整える必要がある」との国防総省の要請に基づくもので、生産されるものの多くが軍事用とみられる。

プルトニウム238は、同239と違って核兵器の原料にはならないが、半減期が88年と長く放射能レベルも高いため、環境中での影響は大きい。今後、環境保護団体や反核団体から反発が予想される。

プルトニウム238は、自己崩壊する時に熱を出すため、これを利用して長寿命のプルトニウム電池などが作られており、米航空宇宙局(NASA)の探査機の電源用にも使われている。

米国はサウスカロライナ州の施設で行っていた生産をコスト高などを理由に中止。在庫を使ったりロシアから購入したりして、長期間保守がいらない電源に利用してきた。

だが関係者によると、今後、科学、軍事目的ともに需要増加が予想される一方、ロシアからの購入分は民生用に限られるなど、供給体制に不安がある。

このため、米エネルギー省はこれまで調査研究費程度だったプルトニウム238関連の予算を2005会計年度から大幅に増額。年5キロ程度の生産能力を持つ施設の建設を急ぐことにした。


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