[原子力産業新聞] 2003年8月7日 第2197号 <1面>

[原子力委] プル利用で「考え方」

 原子力委員会は、5日、「我が国におけるプルトニウム利用の基本的な考え方について」を委員会決定し、この中で、プルトニウム利用目的の透明性と明確化のため、再処理前に電気事業者に利用計画の作成・公表を義務付ける考えを示した。これは、六ヶ所再処理工場の建設が最終段階にさしかかっており、今後操業に伴い、相当量のプルトニウムが分離・回収されるため、プルトニウム利用の透明性向上を図ることを目的としたもの。

 原子力委は、電気事業者に対し、プルトニウムの所有者、所有量、利用目的(量、場所、時期、期間も含む)等を記載した利用計画を、毎年度プルトニウムを分離する前に公表するよう求め、この妥当性を原子力委で確認。電気事業者が、この利用計画を最新にし、必要に応じて計画の見直すよう求める。

 海外から返還されるMOX燃料や東海再処理施設で分離されるプルトニウムについても同様の措置を取るとしている。

サイクルで取り纏め

 原子力委員会は5日、、核燃料サイクルに関するこれまでの考え方をとりまとめた文書「核燃料サイクルについて」を発表した。同委員会は、昨年11月以来、9回にわたり「核燃料サイクルのあり方を考える検討会」を開催、立地地域の首長、電気事業者、ジャーナリスト、消費者団体、学識経験者等から意見を聞くとともに、委員会として核燃料サイクルとプルトニウム利用についての考えをまとめてきた。

 「核燃料サイクルについて」は、世界のエネルギー情勢、わが国における原子力の重要性を俯瞰したあと、ウランの利用効率が直接処分に比べて、軽水炉でのプルトニウム・リサイクルで5割程度、高速増殖炉を使ったサイクルでは100倍程度向上すると強調、「資源の有効利用及び我が国の脆弱なエネルギー供給構造を改善」するとしている。

 一方、核燃料サイクルでの課題として、@経済性A将来展望B核不拡散C国際動向――の4点を挙げた。経済性については、経済協力開発機構・原子力機関(OECD・NEA)の試算から、再処理等のコストを「総発電費用の2〜3%」とし、経済性だけでなく、エネルギー安全保障等、長期的な視点からの政策選択が重要としている。

 プルサーマルの遅れや「もんじゅ」の運転停止等から、核燃料サイクルの将来展望が不明確との見方に対して、我が国の原子力利用を、軽水炉利用の第1段階、プルサーマルによる軽水炉サイクルの第2段階、高速増殖炉サイクルの第3段階に分けて明示、「軽水炉サイクルと高速増殖炉サイクルは共存」としている。

 核不拡散については、日本が核不拡散条約(NPT)に加盟、国際原子力機関(IAEA)の保障措置を受けるとともに、追加議定書を締結していることなどから「核不拡散政策上は問題がない」としながらも、国際的な懸念を生じないように「利用目的のないプルトニウムは持たない」との原則を示している。


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