[原子力産業新聞] 2003年8月7日 第2197号 <3面>

[米・MIT] 2050年に原子力10億kW

 米国のマサチューセッツ工科大学(MIT)は29日、地球温暖化対策等のため、2050年までに全世界の原子力発電容量を現在の約3倍にあたる10億キロワットまで増大させるべき(=表)との報告書「原子力発電の将来―MITの学際研究」を発表した。同報告書は、原子力発電拡大にはコスト、安全性、廃棄物、核拡散の4つの課題があるとし、これらの課題に対処するためにも、2050年まで核燃料サイクルはワンススルー方式を採るべきだとしている。

 この報告書は、MIT化学学部のドイチェ教授と物理学部のモニッツ教授を共同委員長とするMITとハーバード大の共同研究グループが、アルフレッド・P・スローン財団の援助を得てまとめたもの。

 ドイチェ教授は、2020年には火力発電所から排出されるCO2が全CO2放出量の40%以上を占めることになるとし、中でも石炭火力は、52%の発電シェアにもかかわらず、発電からのCO2放出量の90%を占め、「原子力発電の選択肢を除外すると、CO2放出量管理における長期的利益を失うことになる」と述べている。

 報告書は「原子力発電が、CO2放出量を減らし、かつ増え続ける電力需要を満たす有望な選択」とし、2050年までに原子力発電容量を現在の約3倍の10億キロワットに増やせば、毎年18億トンのCO2放出が削減でき、これは現在のままのシナリオに比べ、放出増加分の25%にあたるとしている。

 しかし同時に、選択肢としての原子力発電の見通しは限られているとし、原子力拡大のためには、@コストA安全性B廃棄物C核拡散――の4つに重大な問題があるとした。

 コストについて、自由化された電力市場では、原子力発電は石炭火力や天然ガスに対して競争力を持たないとしつつも、資本費や運転・メインテナンス費の削減、建設期間の短縮などで、このコスト差を縮めることができるとし、さらに政府が炭素排出税を導入すれば、原子力発電がコスト的に有利になりうるとしている。安全性については、現在の炉心設計により、重大事故の確率は非常に低くなったとしながらも、建設・運転での改善が重要とし、さらに核燃料サイクル全体の安全性については分からない部分が多いとしている。

 廃棄物については、「使用済み燃料の再処理を行う、改良型の閉じた核燃料サイクルの持つ、廃棄物管理上の長期的な利点が、短期的なリスクとコストを凌駕するという、説得力のある証拠はまだない」とし、ワンススルー・サイクルを改良すれば、廃棄物管理上の利点は大きいとしている。一方核拡散については、原子力発電を利用拡大していく上で「現在の国際保障措置体制は不適切」とし、「欧州、日本、ロシアなどのプルトニウム分離・リサイクルは正当化されない拡散リスクをもたらす」と述べている。

 これらから報告書は、「少なくともあと50年間は、ワンススルー・サイクルが最良の選択肢」だとし、50年間に原子力発電を3倍に増やすシナリオでも、ウラン資源は適切に確保できるとしている。

 報告書は勧告として、エネルギー省(DOE)に対し、安全性の高い新型炉の建設を産業界に促すため、建設費200ドル/キロワットまでの免税措置の創設、研究開発活動をワンススルー方式に焦点を当てて行うよう求め、また、新たな核燃料サイクルに関する分析研究を行う間、同省の新型核燃料サイクル・革新型炉の開発や実証は行わないよう求めている。

 また、国際原子力機関(IAEA)に対しては、保障措置追加議定書により、全ての疑惑施設を査察する権限を持つよう求めるとともに、世界的な核物質防護・管理等を進めるよう勧告している。


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