[原子力産業新聞] 2003年8月7日 第2197号 <3面>

[シリーズ] 龍門建設をめぐる動き(上)

 龍門原子力発電所建設の継続を選ぶか、脱原子力国家を選ぶか――。台湾の立法院は、7月11日、同発電所に関する国民投票法で合意できないまま閉会したが、陳水扁総統は、来年3月にもこの問題で国民投票を行いたい意向だ。今号と次号(21日号)の2回、台湾の原子力開発に長年関わってきたた核能科技協進会執行長の謝牧謙氏(=写真)に、この問題とその背景について解説して頂く。謝牧謙氏は日本の東北大学大学院で博士号を取得後、台湾の核能研究所に勤務、原子力委員を務め、現在は輔仁大学教授。本紙には日本語で寄稿頂いた。

 台湾は、現在建設中の「核4」(第4(龍門)原子力発電所)を巡って、また揺れ動き始めた。

 今年6月27日、台北の国際会議場で「全国非核家園大会(非核国家全国大会)」が開催され、陳水扁総統は開幕挨拶で来年3月20日の総統選挙時に「核4公投」(龍門原子力発電所の国民投票)を行うと表明した。

 龍門原子力発電所は、台北から約30キロメートル東に位置する台北県貢寮郷に建設中。出力135万キロワット2基、日本の柏崎刈羽原子力発電所で稼働中の最新鋭のABWRと同タイプであり、現在工事の進捗率は約50%である。

 大会には、原子力資料情報室の伴英幸氏を含め、スウェーデン、アメリカから3名の国外ゲストが招かれて講演を行った。伴氏は、平和で持続可能な未来のために、日本の原子力の経験について報告した。

 大会には約200名が出席。しかし会場前には、台湾電力の職員組合と家族約3500人が集まり、会場前でデモ集会を行なった。彼らは「非核主張」に反対、現段階において「龍門の建設中止」と「第1(金山)、第2(国聖)、第3(馬鞍山)原子力発電所の廃炉」は、国の経済を打撃、国際信用も落とし、外国からの投資も停滞する、非核運動は厳しく社会発展を阻害していると訴えた。

 非核会議の主催は行政院全国非核国家推進委員会、委員長は政務委員(大臣)が担当。本会議の下に「非核国家教育」、「非核国家宣伝」、「龍門発電所建設監督」、「非核国家法案」、「クリーンエネルギー」、「放射性廃棄物」、「廃炉」、「エネルギー構造」等、8つのグループが設けられ、グループ責任者は政府機関の委員(大臣または次官)または反原子力の大学教授が担当した。従って、大会の結論は会議前から明らかであった。

 龍門原子力発電所論争の経緯を辿ってみる。1980年にスタートした龍門プロジェクトは経済不況で凍結、1992年にプロジェクト再開、1996年台湾電力とアメリカGE社とが契約締結、主な設備は日本メーカー(日立、東芝、三菱重工)が供給、1999年3月1号機着工、同年8月2号機着工となっている。

 ところが、2000年3月に政権交代、反原子力派の民進党・陳水扁氏が総統選挙に当選、同年6月「龍門原子力発電所建設再評価委員会」が発足。工事は一時停止、同年10月に行政院長が建設中止を命じる。2001年2月陳総統が龍門建設再開を決断、政治、経済面での危機を回避した。国会再審議の際、将来的に「非核国家」を目指すこと等を条件に、行政院は建設の再開へ合意した。

 今後の予定は今年9月国会で「公投(国民投票)法」と「脱原子力法案」の審議、来年3月総統選挙と同時に「核4公投(龍門原子力発電所に関する国民投票)」を行う。


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