[原子力産業新聞] 2003年9月4日 第2200号 <2面>

[原産、米・NEI] 共同でセミナーを開催

 米原子力エネルギー協会(NEI)と日本原子力産業会議は8月29日、東京・港区の虎ノ門パストラルで、「運転実績の大幅改善と規制改革に向けたイニシアティブ−米国原子力産業界に学ぶ」と題した共同セミナーを開催、日本の原子力産業界および在京大使館等から約150名が参加した。NEIからはA・ハワード上級副理事長(=写真)ら4名が講師として参加、米国の原子力団体の変遷や原子力規制の改革等について講演した。

 セミナーの冒頭で挨拶に立った原産の宅間専務理事は、「米国の原子力界は電力自由化をスプリングボードとして、世界最高の利用率を達成、著しく活性化し、これを主導してきたのがNEIだ。日本でも電力自由化が目前に迫っており、NEIの経験に学びたい」と挨拶した。

 最初にNEIのハワード上級副理事長が、米国の原子力機関・団体の沿革について概観、1953年の原子力民間利用に伴い米国原子力産業界(AIF)が設立、1994年には電力自由化と競争激化に対応し、AIF等民間5団体が合同して、産業界の意見を取りまとめ統一見解を示すためにNEIを設立、現在、15か国から270社が会員となっていると述べた。他電源との競争の中で、米国の原子力発電所は90%以上の設備利用率を達成、安全性でも米国の産業安全のモデルとなっているとしながらも、重要な情報の共有や、将来に向けた明確なビジョン作成など、何十年もの努力の末に成功を手に入れたと強調した。

 続いてNEIのピエトランジェロ・リスク規制担当上級部長が、米国の原子力規制の変遷と規制の改革について解説した。同部長は、米国ではTMI事故後の多くの規制追加や変更、原子力発電所建設の遅れなどの時期を経て、米原子力規制委員会(NRC)は1986年に、「どれだけ安全ならば十分に安全か」を示す「安全目標政策声明」を発表、原子力によるリスクを他のリスクと関連づけ、炉心損傷で10×マイナス4乗/年、大規模放射能放出で10×マイナス5乗/年の数値目標を設定した。

 1991年にNRCは保守規則を制定、1995年には確率論的リスク評価(PRA)声明を発表してPRAの利用を奨励、リスク情報とパフォーマンスに基づくアプローチを行っている。2000年4月からは新たな原子炉監視プロセス(ROP)を導入、各原子力発電所は18のパフォーマンス・インディケータ(PI)を使って、透明性を保ちつつ、発電所のパフォーマンスを改善している。

 ピエトランジェロ部長は、この結果、1基あたりの「重大事象」は、1989年の0.9件/年から0.03件/年に大幅に改善されたと報告、同時に、これらの改善には長い年月がかかったとも述べた。


Copyright (C) 2003 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.