[原子力産業新聞] 2003年9月11日 第2201号 <2面>

[世界原子力大学] 正式に設立

 世界原子力大学(WNU)は、4日、ロンドンのクイーン・エリザベスU会議センターで設立式を執り行った。これは、世界原子力協会(WNA)年次総会の初日に開かれたもので、同大学の学長にはH・ブリックス前国際原子力機関(IAEA)事務局長(=写真)が就任。エルバラダイIAEA事務局長なども出席し設立を祝った。

 世界の原子力界では、「原子力ルネッサンス」が謳われ、既存の原子力発電所の運転延長や新規原子力発電所の建設などで新たな人材への需要が増えることが予測されるなか、特に若手技術者の不足が懸念されている。

 アイゼンハワー米大統領の「アトムズ・フォー・ピース」演説から50周年を記念して設立されるWNUは、キャンパス等は持たず、参加機関・大学間のネットワークの「ハブ」となる「仮想大学」という位置付け。同大学には、24か国から34大学・研究機関が会員となっており、日本からは東大と東工大が参加。IAEA、OECD・NEA、世界原子力発電事業者協会(WANO)、WNAが支持を表明している。WNU理事長にはZ・ペートWANO前議長が就任。

 WNUは「国境を越えた協力ネットワーク」の中核として、加盟機関間の協力を促進・調整、ネットワークを通じた通信教育の普及を図るとしている。WNU本部には、コアとなる少数の著名な教授陣を置き、@標準カリキュラムの開発A運転安全性など国際的に重要な意味を持つ十二分野のコース設計――等に取り組み、将来は参加機関等と協力し、サマースクールの開催や、WNUの認可する修士コースの開設を目指す。

 設立式でエルバラダイIAEA事務局長は、最近マサチューセッツ工科大学(MIT)が発表した、2050年までに100万キロワット原子力発電所700基を建設する構想に触れ、「この構想は、適切な人的資源がなければ実現できない」とし、高齢化が進む労働力を若者に置きかえていくためにも、「WNUの設立はこのニーズに応えるための重要な行動」と称え、「この事業が成功するために、IAEAは他の機関とともに協力する用意がある」と述べた。


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