[原子力産業新聞] 2003年10月2日 第2204号 <1面>

[総合資源エネ調] エネルギー基本計画まとまる 経産大臣に提出へ

 経済産業省は1日、第8回目となる総合資源エネルギー調査会基本計画部会(茅陽一部会長、=写真)を開催した。4月の審議開始以来、最終回となる今会合では「エネルギー基本計画」最終案が委員の大多数の同意で採択され、少数意見も添えて、茅部会長が近く中川昭一経済産業大臣に提出することとなった。

 基本計画では、安全安定供給の確保、環境への適合、市場原理の活用という3本の基本方針を示し、原子力発電および核燃料サイクルには、「長期的、総合的かつ計画的に講ずべき施策」のなかで「多様なエネルギーの開発、導入及び利用」の一環として位置付けている。核燃料サイクルについては、プルサーマルを「当面の中軸」とし、実現に向けて「政府一体となって取り組む」としている。

 電力小売り自由化が原子力発電や核燃料サイクルに及ぼす影響については、「事業者が投資に対して慎重になることも懸念される」とし、特にバックエンド事業は、超長期の事業であり、投資リスクが大きくなるとの認識を示した。このため、原子力発電については、大規模発電と送電設備との一体的な形成・運用を行う「一般電気事業者制度を維持」するとともに、広域的な電力流通の円滑化、優先的に原子力発電からの給電を認める優先給電指令制度、中立・公平・透明な送電線利用ルールの整備、「発電用施設周辺地域整備法」における支援の、原子力発電等長期固定電源への重点化などを挙げている。

 バックエンド事業については、国の政策と企業の投資リスクとの「整合性を図ることが重要」とし、バックエンド事業のコスト構造や原子力発電の収益性等を分析する場を立ち上げ、2004年末までに「経済的措置等の具体的な制度」を検討、必要な措置を講ずるとしている。

 今年8月に全国知事会が出した「緊急要望」を受け、基本計画最終案に「原子力の安全の確保と安心の醸成」の1項目が新たに加えられた。今年10月から実施される新たな安全規制体制について、これが有効に機能しているか「聖域なく十二分に検証を行うことが必要」としている。

 基本計画部会の吉岡斉委員は、エネルギー基本計画最終案に同意できないとして、理由書を提出した。同氏は、基本計画案が、政府と事業者が一体となって原子力発電を推進するとしていることについて、政府は民間事業に直接介入してはならず、規制・誘導ルールの設定とその監督に専念すべきで、「自由主義経済の大原則が蹂躙されている」などと指摘。茅部会長は、エネルギー基本計画を経済産業大臣に提出するさい、吉岡氏の少数意見も添えて提出したいとしている。


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