[原子力産業新聞] 2003年10月2日 第2204号 <2面>

[原子力学会] 「アトムズ フォア ピース イン ジャパン(アジア)」開催

 日本原子力学会は、関係諸機関の後援を得て、9月29、30の両日、東京・中央区の日本橋東友会館で「アトムズ フォア ピース イン ジャパン(アジア)」を開催し、約160名の原子力関係者が参加した(本紙第2198号参照)。

 会議の初日冒頭、開会挨拶で斎藤伸三日本原子力学会会長(=写真)は、「国内の原子力開発はプルサーマル、廃棄物処理等の幾多の問題を抱え、また国際的にも北朝鮮、イラン等の核兵器開発疑惑により核不拡散体制が危機に直面し、原子力開発は難しい段階を迎えている。アトムズ・フォー・ピースで原子力平和利用政策に諸手を挙げて賛成したのに、なぜ現実は著しく乖離してしまったのか、検証する必要がある」と述べ、問題点を提起した。

 続いて、金子熊夫氏(EEE会議)が「開会の意義と米国でのアトムズ・フォー・ピース」と題して講演。かつて外務省で原子力関係の交渉当事者として活躍した経験と知見を背景に、「アイゼンハワー演説は、アトムズ・フォー・ピースで有名だが、核拡散防止が主眼であり、平和利用推進のみではない。最近では、米国内にアトムズ・フォー・ピースは失敗だったという意見さえある。カーター政権の国際核燃料サイクル評価(INFSE)政策に見られるように、米国の原子力に対するスタンスは軍事戦略上のもので、日本の立場とは異なっていた。今後、日本は国内のエネルギー問題としてのみ原子力を見てはならない」と指摘。さらに同氏は、今後の日本はエネルギー戦略を確固としたものとする一方、人材養成等でアジア諸国との原子力協力を推進すること、具体的なビジョンを持って日本の国際社会での役割をしっかり議論していくことが重要であるとの提言をした。

 この後、池亀亮氏(エネルギー問題に発言する会)と益田恭尚氏(日本電機工業会)がそれぞれ電気事業者と製造業者の立場から、「商業の利用としての原子力発電 50年」、「原子力を支えた物つくり 50年」と題して、キーノートスピーチを行い、過去の原子力開発活動の失敗例、活動から得られた学習成果、今後の原子力開発への提言等を披瀝した。


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