[原子力産業新聞] 2003年10月9日 第2205号 <2面>

[仏・CEA] MIT報告書に反論

 フランス原子力庁(CEA)は、9月17日、米マサチューセッツ工科大学(MIT)が7月に発表した報告書「原子力発電の将来―MITの学際研究」(本紙8月7日号3面を参照)の主要論点5点について反論、「米国内では通用しても、世界的には通用しない」などとするコメントを発表した。

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 MITが勧告したワンススルー方式について、 同コメントは、ラアーグ工場で使用済み燃料1万8000トンを再処理したこと、MOX燃料としてプルトニウム60トン以上をフランス国内20基の原子力発電所でリサイクル済みとの実績を挙げ、特に燃料サイクル問題について、報告書は概して「説明不足であるか、不確実な情報によるか、もしくは米国内では通用するが、世界には通用しない」と結論付けている。

 コメントでは、@ウラン資源A経済性B使用済み燃料・高レベル廃棄物管理C核燃料サイクルの安全性D核不拡散――の5つの論点について、MIT報告書を分析。ウラン資源について、報告書が相当楽観的なウラン鉱石価格を想定し、ワンススルー方式との結論を導いているが、ウラン価格次第で再処理・リサイクルの選択肢が競争力を持ち得ると指摘している。

 経済性については、MIT報告書が、多くの国で電力価格が不透明で政治的なものであり、再処理・MOX加工は手厚く助成されているとしたのに対し、コメントはEU諸国では競争が義務付けられ、規制緩和に邁進していると反論している。また、MOXでのリサイクルによる燃料サイクルコストについても、報告書が述べるように直接処分の4.5倍になるのではなく、キロワット時あたり4〜6%増加するにすぎないとしている。

 高レベル廃棄物については、MIT報告書がガラス固化処理により高レベル廃棄物を1万年以上の長期にわたり安全に管理するといった、先進燃料サイクルの利点を過小評価する一方、再処理・リサイクルのリスクとコストを著しく過大評価しているとしている。

 核燃料サイクルの安全性について、MIT報告書は軍事用プルトニウム製造工場等での高レベル廃棄物関係の事故から、再処理の安全性に問題ありとしているが、CEAのコメントは、「報告書は遺憾なことに、初期の軍事用再処理工場と現在の商用再処理施設とを、不当にも混同させている」とし、「論点は極端に弱い」と両断。現在のCOGEMA社等の商業用再処理工場は良好な運転成績を挙げていると強調している。

 核不拡散について、MIT報告書はピューレックス法によるMOX燃料サイクルが、プルトニウムを分離するため、核不拡散上好ましくないとしているが、コメントは、むしろ高濃縮ウラン等フロントエンドの方が拡散リスクが高いとし、商業用再処理から軍事用に核物質が転用されたケースはないとしている。


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