[原子力産業新聞] 2003年10月23日 第2207号 <2面>

[IAEA] イラン、核問題で譲歩

 国際原子力機関(IAEA)は21日、エルバラダイ事務局長の16日のイラン訪問中、イラン当局が、全ての原子力活動に関する情報の公開を約束、また、保障措置追加議定書への署名の意思を表明したと発表した。

 9月のIAEA理事会が定めた10月末の期限が迫る中、エルバラダイ事務局長は21日、イランが「数日以内に」IAEAに対して、全ての原子力活動に関する完全な申告と、追加議定書締結の意志の公式な表明」を行うよう求めた。

【テヘラン21日共同】イランのハタミ大統領は21日、核開発疑惑をめぐり同国を訪問した英国、フランス、ドイツの3か国外相とテヘランで会談し、@核査察強化のための国際原子力機関(IAEA)追加議定書の調印と履行AIAEAへの完全な協力Bウラン濃縮と再処理活動の停止――で合意。同日、合意内容を共同声明として発表した。イランが全面譲歩したことで、核問題の国連安全保障理事会への付託が回避され、国際社会との対立の危機は当面避けられる見通しとなった。

 国営イラン通信によると、ロウハニ最高安全保障委員会事務局長は次回のIAEA理事会が予定されている11月20日までに追加議定書に調印すると語った。ウラン濃縮の停止期間については「1日か1年かイランの判断による」と述べた。

 また、3か国はイランによる核エネルギーの平和利用の権利を承認。さらに、国際社会の懸念が払拭されれば「最新の技術の取得が容易になる」とし、イランが求める原子力技術の供与の可能性を指摘。会談後、記者会見したフランスのドビルパン外相は「3か国にとっても欧州にとっても重要な日となった」と述べ、重要な進展であることを強調した。

 IAEA理事会は9月、イランに対し今月末までに全面協力するよう求める決議を採択。イランが従わない場合、同理事会はイランの核問題を国連安保理に付託することも辞さない姿勢を示し、16日にはエルバラダイ事務局長がイランを訪問し協力を要請した。

 イランの核開発計画に関し、同国と英国、フランス、ドイツ3か国外相が21日に発表した共同声明要旨は次の通り。

▽イランと3か国外相はイランの核開発疑惑についての問題解決を目指した措置に合意▽イラン当局は、核兵器を同国の国防ドクトリンに組み込む意思がなく、核計画は専ら平和目的であると再確認▽イランは核拡散防止体制の堅持に取り組み、完全な情報開示の下、国際原子力機関(IAEA)の要請に応えるために全面協力することを決定▽イランは信頼性向上のため、IAEAとの追加議定書に調印することを決定▽イランは自主的にすべてのウラン濃縮と再処理活動の停止を決定▽3か国外相はイラン政府の決定を歓迎▽3か国外相はイラン当局に対し、核拡散防止条約(NPT)に沿ったイランによる原子力平和利用の権利を認める▽IAEA追加議定書は、イランの主権を損ねる意図はないと確認▽議定書完全履行決定は(核開発疑惑という)目下の懸案解決を可能にすると確認▽イランの決定は核開発計画に関し、全当事者が満足できる対話に道を開くとの認識を伝達▽中東からの大量破壊兵器を一掃する体制づくりをはじめ、地域の安全と安定を促進するためにイランと協力。


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