[原子力産業新聞] 2003年10月30日 第2208号 <1面>

[シリーズ] ニッポンの町工場街を歩く 安久工機(大田区) @

 大田区の町工場街の一角にある(有)安久工機。各種機械・電気設計や精密部品加工を手がける田中文夫社長(=写真)は、「様々なトラブルの原因は、現場のアナログメカの基礎技術の弱体化。シンプルな設計によりシステムのトラブルを防ぐ必要があるが、そのためにも基礎技術が重要」と語る。田中社長は、50年間、現場に立ち続けるとともに、多くの学生に現場体験を提供、卒業論文の作成に協力を惜しまない。

 田中社長が最初に原子力関係の大きな仕事に出会ったのは1989年。東京電力福島第二原子力発電所で再循環系の破損事故が発生。原因を分析するための検査ロボットを作って欲しいと頼まれた。

 段差のある約20メートルの配管の中を、その位置を正確に把握しながら自由に進め、内部に残った破損物などを回収できるロボットが必要。このため、先端には小型カメラと破損物を回収できるメカ機構を搭載する。カメラ画像は光ファイバーを通して随時監視。「自在に曲がる内径40ミリメートルのチューブに3本の光ファイバーを通すが、正確な位置の把握しながら自由に進めるなど難しい点が多かった」(田中社長)という。

 自在に曲げられるようにするため、当初は数珠状のメカ、蛇腹チューブなどのアイデアを検討、試作したが、正確な位置の把握が困難という壁が立ち塞がる。納期が迫るなかでの試行錯誤の繰り返し。やがてテフロンチューブの外側に約7ミリメートルピッチのネジ山を刻み、このネジ山にナットを取り付け、ナットを回転させることで先端にカメラやメカ機構を取り付けたチューブが自由に進む仕組みの検査ロボットに辿り着く。

 テフロンチューブにネジ山を刻むため、ネジ山付きの型の中にチューブ材を入れ、加熱しながら圧力をかける方法を取り入れた。「テフロンチューブは15メートルのものしか無いため、テフロンメーカーに無理を言って2本繋いでもらったが、テフロンは繋ぎ難くメーカーも大変苦労した」という。

 原子力関係ではその後、改良型沸騰水炉(ABWR)用として、制御棒の微調整を行う電動式制御棒駆動機構のモーター制御部分を手がけた。「小型モーターを使用したアナログ系コントロールユニットで、設計から試作、品質管理まで行った」。(次号に続く。高橋毅記者)


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