[原子力産業新聞] 2003年10月30日 第2208号 <10面>

[FNCA、学術振興会] バイオ肥料で共同WS

 アジア原子力協力フォーラム(FNCA)と日本学術振興会は、 10月20日から24日まで、ベトナム・ハノイ市とホーチミン市で、「バイオ肥料プロジェクト合同ワークショップ(WS)」を開催した。WSには、FNCA参加8か国から約40名が参加、学術振興会支援の日本人専門家や国際原子力機関(IAEA)専門家等が参加した。

 FNCAと学術振興会はともに、アジア地域で「バイオ肥料」研究・普及での協力を進めている。「バイオ肥料」とは、微生物である根粒菌(ライゾビウム)が、空気中の窒素を固定し植物(主に豆類)が利用できる形態に変える機能を利用した有機肥料。両機関の交流を深め、より効果的なWSを行うため、FNCAの枠組みでは初の共同WS。

 WSでは、FNCA各国からのバイオ肥料に関する研究報告が行われたほか、窒素15などのアイソトープ技術を使った最適な根粒菌の同定や、根粒菌の品質向上に必要な土壌滅菌を放射線照射で行う技術など、活発な討議が行われた。

 20日午後、参加者はハノイから約70キロ離れたビン・フック省を訪問、ピーナッツでの「圃場比較試験」を見学した。「圃場比較試験」は、政府や農家にバイオ肥料の効果を実際に示すため、FNCAプロジェクトの重要な活動として、現在各国で行われている。

 この圃場では、化学肥料のみを利用した「コントロール区」と根粒菌を利用した「バイオ肥料適用区」で比較試験を行っており、参加者は、「バイオ肥料適用区」の方が、「コントロール区」に比べ、作物の生長が優れている様子を見ることができた。また、作物の根の部分を比べてみると、「バイオ肥料適用区」の根粒の方が粒の大きさが大きく、数も多いことから、バイオ肥料の効果により、作物がより多くの窒素を固定できることがわかる。作物自体も、バイオ肥料を与えた方(=写真右側)が、与えない方より(同左側)大きく育っている。

 アジア諸国では、この十数年で化学肥料の使用が急増、肥料の輸入に伴う経済負担、環境汚染が深刻な問題となっている。バイオ肥料は、この問題を解決しながら、作物の収量の増加も期待できる。FNCAバイオ肥料プロジェクトでは持続可能な農業の普及によるアジア地域の貧困撲滅と環境保全に貢献する計画だ。


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