[原子力産業新聞] 2003年11月6日 第2209号 <1面>

[原文振] 原子力の日シンポ

 日本原子力文化振興財団は、既報(10月30日付)のとおり、「原子力の日」記念シンポジウムを開催した。今号では、パネル座談会の概要を紹介する。パネリストは、石川英輔氏(作家)、内山洋司(筑波大学機能工学系教授)、小沢遼子氏(評論家)、嶌信彦氏(ジャーナリスト)、桝本晃章氏(東京電力副社長)の各氏。コーディネーターは福島敦子氏(キャスター・エッセイスト)。

〈この夏の関東圏の電力危機をどう考えるか〉
小沢氏 電気があるという意味をもっと考える期間にすべきだった。
嶌氏 基本を押さえれば万一停電になっても余裕ある対応ができる。個々の気の持ち方が大事。
内山氏 停電が経済活動に大きな影響を与えることは今回の北米停電からも明らかであり、高齢化社会では命に係わる。
(桝本氏は、休止していた火力発電の稼働をはじめとする東京電力の対応を説明、節電への協力、再稼働への地元の協力、全国の電力会社からの応援などについて謝意を述べた)

〈日本のエネルギー事情と原子力発電の意義〉
嶌氏 21世紀のライフスタイルを考えながら電力も考える必要がある。原子力と共存しなければならないが、供給者は絶対に安全ではなく、不安はあるが安全に努力するというプレゼンテーションに改めるべき。
小沢氏 原爆体験、反対派への対応など日本の原子力発電は不幸な状況が続いてきたが、すでにそういう時代ではない。日本が先進国であり工業国であることを恥じても仕方がない。自立したエネルギーを持つことが重要であり、原子力をきちんと評価し、関係者が誇りを持つようになって欲しい。

〈原子力の信頼をどう回復するか〉
石川氏 日本の原子力発電所はすでに40年間巨大なエネルギーを生み出しながら事故といえる事故を起こしていない。小さなトラブルを大きく報道するマスコミは、物事を客観的に伝えるという視点に欠ける。
内山氏 マスコミも含め日本は原子力への危険意識が非常に高いが、技術的に的確に評価する必要がある。
桝本氏 不祥事の再発防止を確認できたとは言い切れないのが現状だが、不祥事の原因は50年間の制度疲労であり、信頼回復のためには現場で当社を見て頂き、安心を認めて頂く以外にない。新潟の地元の方々の要請に応えてルールにない全点検の実施を判断した。安全のプレゼンについて指摘を頂いたが、我々もその事を考え始めた。また、情報公開は当社が個々に必要、不要の判断を行うのではなく、判断無しで全て出すことを検討している。

〈クロージング〉
小沢氏 立地をはじめとする原子力発電の状況は日本の制度疲労の縮図。最近、原子力に魅力を感じる理科系の学生が少ないと聞くが、現場の人がプライドを持って働き、次世代の原子力を担う多くの若い技術者が出て来て欲しい。
内山氏 技術開発には実際にやって見なければ実証できないという面がある。日本にとって技術力で生み出せるエネルギーを持つことは重要である。
嶌氏 日本の原子力産業は発展途上国の環境問題やエネルギー問題にも貢献して欲しい。


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