[原子力産業新聞] 2003年11月13日 第2210号 <1面>

[放医研] 高度先進医療で承認

 放射線医学総合研究所重粒子医科学センターは、このほど固形がんに対する重粒子線治療について、厚生労働省から高度先進医療の承認を取得した。これにより同治療は、臨床試験から普及促進の段階に移行する。

 重粒子線は、体内の一定の深さで最も強い線量になるようにコントロールできることが大きな特徴。このため体外から照射しても体の表面や他の組織への影響を最小限に抑え、深部のがん病巣に集中的に照射できる。

 同センターでは炭素イオン線をがん治療に用いるため加速器や照射装置などで構成する「HIMAC」を開発。1994年からは臨床試験を重ね、今年9月までの累計臨床試験登録症例は1600件に達している。昨年4月に厚生労働省に高度先進医療を申請、先月開催の中央社会保険医療協議会で承認され、今月1日から適用。

 重粒子線がん治療の対象となるのは主にがん病巣が局所にとどまっているもの。肺、肝、頭頸部、前立腺、骨・軟部組織などほぼ全臓器を治療できる。

 高度先端医療の承認により、同治療は普及促進の段階に入るが、同医療に係わる費用は全額患者負担で314万円必要。将来は一般保険診療の適用が期待されるが、このためには装置の小型化による設置台数の拡大が鍵を握っており、同センターは小型装置の開発も進めている。


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