[原子力産業新聞] 2003年11月20日 第2211号 <2面>

[総合資源エネ調査会] 電気事業分科会を開催

 総合資源エネルギー調査会電気事業分科会(分科会長=鳥居泰彦・慶應義塾学事顧問)は14日、第16回会合を開き(=写真)、コスト等検討小委員会(近藤駿介委員長)が行った核燃料サイクル・バックエンドコストの検討結果を聞くとともに、委員間で議論を行った。また、2004年4月からの高圧500キロワット以上の小売り自由化と翌年4月からの全高圧需要家への自由化拡大をにらんだ卸電力取引市場の創設等、将来の電気事業制度の詳細設計についても議論を行った。

 バックエンドコストについて、資源エネルギー庁の安井正也・原子力政策課長が、「まだまだ検討しなければならない点が多い」としつつ、同小委員会での当面の検討結果(本紙11月12日号1、2面参照)を報告した。

 続いて藤洋作・電気事業連合会会長が「原子力発電と自由化を両立させるため」とし、事業者を代表してコメント。バックエンドコストについて、@事業期間が超長期かつ初めての事業で不確実性が大きいA巨額の費用がかかるが、費用の発生時期と回収時期が異なるBこれまでに未回収の費用が存在する――の3点を指摘。自由化される電力市場の中で、官民の役割分担と、バックエンドに対する政府の「経済的措置」の在り方が重要と述べた。

 同会長はさらに、世代間でのコスト負担の公平性の確保や、未回収コストの確実な回収など再処理事業を円滑かつ安定的に進める方策、未回収費用の回収方法などを課題として挙げた。さらに将来の使用済み燃料政策について、必ずしも全量再処理にこだわらない「柔軟な対処を国の施策とすべき」と要望した。

 委員からは、「六ヶ所村再処理工場がきちんと動くことが重要で、何かあれば民営再処理が不可能になる」、「小さなトラブルが起こった時、適時にきっちり説明して説得できるシステムが必要」、「様々なシナリオにもとづくコスト計算を示すべき」、「一時的にかかるコストと定常的にかかるコストとの区分が必要」などの意見が出された。また、何らかの事態により再処理工場の運転が継続できなくなったさいのシナリオや国と民間の役割を考えておくべきとの指摘もあった。

 消費者団体の代表者らからは、「事業者と経産省は原子力が最も安いとアピールしてきたのに、消費者に新たな負担を求めることは問題」、「2046年までに再処理されない3.4万トンの使用済み燃料とその処理処分コストはどうなるのか」、「今回発表のコストは上限コストとして事業者が責任持てるのか」等の意見が出された。第2再処理工場について、原子力委員会事務局から参加していた内閣府の永松審議官は、「第1工場の運転を見極める必要がある」とし、長計でも2010年頃から検討することになっていると説明した。


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