[原子力産業新聞] 2003年11月20日 第2211号 <3面>

[シリーズ] 韓国の廃棄物管理事業(上)

 韓国では今年7月24日、中低レベル放射性廃棄物処分場と使用済み燃料中間貯蔵施設を、韓国南部西岸沖の蝟島(ウィド)に立地すると発表したが、蝟島の対岸の全羅北道扶安(プアン)郡で激しいデモ等抗議行動が起こり、揺れている。今号からシリーズで、原産の調べによる韓国の放射性廃棄物管理状況を、データを中心にお伝えする。

廃棄物管理事業の背景

▽韓国は世界6位の原子力発電所国(18基・1572万キロワット)だが、廃棄物管理施設は確保していない。
▽31の原子力発電国のうち、中低レベル廃棄物処分場の敷地を確保していない国は5か国(韓国、台湾、ベルギー、オランダ、スロベニア)。
▽医療、農業、工業、生命工学などRI利用機関が急増(現在約2000)
▽RI廃棄物は大田の原子力環境技術院で保管中(ドラム缶約5000本)。

建設予定の施設物概要

▽中低レベル放射性廃棄物処分施設
・2008年工事完了目標
・処分の方法=敷地状況により浅層ないしは洞窟処分方式を選択
・施設規模=最終的にドラム缶80万本(第1段階で、10万本規模を建設、段階的に増設を計画)
▽使用済み燃料中間貯蔵施設
・2016年工事完了目標
・国の政策決定時期等を考慮して2008年までに建設着手
・貯蔵の方法=乾式貯蔵
・施設規模=最終的に2万トン(第1段階で2000トンを建設、段階的に増設)

事業推進の状況

▽1986年以後、数回の敷地確保の努力は水泡に帰した(1986〜1995年)。過激なデモを伴う環境団体および自治体の反対が原因。
▽1998年9月、2008年までに中低レベル廃棄物処分施設の完成、および2016年までに使用済み燃料中間貯蔵施設を完成するよう「放射線廃棄物管理対策」を策定
▽処分場の公募誘致を実施し、全国7地域より住民の請願があったが、自治体の反対で申請には至らず(2000年6月〜2001年6月)
▽事業者が主導して敷地を決める事とし、適合な敷地を探し出すため専門機関に依頼し調査実施(2001年12月〜2002年12月)
▽2003年2月4日、第252回原子力委員会において4個所の候補敷地を発表。東海岸2か所(ヨンドク、ウルジン)と西海岸(ヨンガン、ゴチャン)が候補サイトに。これらの候補地域は、環境団体や宗教団体と結びついて激しい反対活動を続ける。
▽韓国政府は放射性廃棄物管理施設の敷地選定と、陽子加速器事業を一括して推進する事を決定。
▽全羅北道の知事が施設誘致表明で記者会見(2003年5月26日)。
▽全羅北道の群山市長が積極的な施設誘致意思を示唆、群山市民の誘致署名が20万に至ったが、活断層が見つかり誘致をあきらめる。
▽全羅北道扶安郡の知事が施設誘致申し込みを提出(同年7月14日)。
▽放射性廃棄物管理施設敷地選定委員会が最終結果を発表(同年7月24日)。全羅北道扶安郡蝟島が廃物管理施設の適合敷地に。

(次号へ続く)


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