[原子力産業新聞] 2003年11月27日 第2212号 <2面>

[佐賀県] 玄海で総合防災訓練

 2003年度の原子力総合防災訓練が26日、九州電力の玄海発電所2号機を対象に実施された。同訓練は年に1度、原子力災害対策特別措置法に基づき行うもので、今回は小泉首相をはじめとする86機関、約9400人が参加。現地の主会場となった佐賀県オフサイトセンターには、他電力および関係自治体、関係機関などから多数の見学者が詰めかけ、緊迫した雰囲気の中、国、地元自治体、関係機関が一体となった現地対策本部の運営と、地元住民の参加を得た避難・退避の訓練などが行われた。

 今回の訓練は、@情報収集、伝達能力の向上および連係の強化A国の現地対応能力の強化B原子力緊急事態宣言の発出等に係る措置の習熟C迅速かつ正確な情報提供のための広報能力の向上D原子力安全委員会の助言機能の確認E関係自治体及び原子力事業者の現場訓練の充実――がポイント。26日午前6時30分、通常運転中の九州電力・玄海発電所2号機(PWR、55万9000キロワット)で、「主給水管の破損に伴い原子炉が緊急停止。その後、非常用炉心冷却設備の故障等による冷却機能の喪失から炉心が損傷し、格納容器からの放射性物質の放出による影響が発電所周辺地域に及ぶ恐れがある」との想定で、各種訓練が実施された。

 想定事故を受け、九州電力では直ちに初動対応を実施。一方、九電からの事故報告を受けた経済産業省も、「経済省警戒本部」を設置するとともに、坂本剛二・経済産業副大臣をオフサイトセンターに、現地対策本部長として派遣した。

 7時55分、経済省警戒本部は緊急事態発生と判断。これを受けた小泉首相は8時30分に、原子力緊急事態宣言を発出、官邸とオフサイトセンターに政府原子力災害対策本部を設置した。以降は官邸、オフサイトセンター、九州電力本店、佐賀県庁、玄海町役場などをテレビ会議システムで結び、事故の現状報告や対策会議などが行われた。

 その後、「炉心損傷の発生により、放射性物質の環境への放出の可能性が出てきた」として、発電所から半径2キロメートルと風下3キロメートル地区内住民の避難・屋内退避を決定。住民約220名が、唐津市文化体育館および唐津市都市コミュニティセンターへ避難を行った。

 13時に「格納容器スプレイ系の復旧に成功。放出は停止」。原子力災害対策本部などの廃止が決定されるとともに、緊急事態は解除。訓練は無事終了した。


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