[原子力産業新聞] 2003年12月11日 第2214号 <3面>

[全米科学アカデミー] ヨウ素剤配布準備を勧告

 全米科学アカデミーの委員会は4日、「原子炉事故時のヨウ化カリウム(KI)の配布と管理」と題する報告書を発表、「設計や安全系の違いから、米国ではチェルノブイリのような事故が起こることは考えられない」としながらも、原子力発電所周辺に住む40歳以下の住民、特に乳幼児と妊娠・授乳中の女性を対象に、ヨウ化カリウム錠剤を配布する準備をしておくべきと勧告した。

 この報告書は、米議会の要請により、全米科学アカデミー・放射線影響研究審議会のトラールッド・ルーイビル大学教授を委員長とする委員会が、今年3月から検討を行いまとめたもので、米疾病管理予防センター(CDC)が資金援助を行った。報告書は、放射性ヨウ素への被ばくの前後数時間以内にKI摂取を行うのが最も効果的だとし、「避難と汚染された牛乳や食料の管理」を行えば、リスクはさらに減るとして、KI配布を原子力発電所事故対応計画の一環として取り込むよう求めている。

 この上で、放射性ヨウ素蓄積からの健康リスクにさらされる人にはKIを提供できるようにすべきだとし、乳幼児を含む40歳以下の人と妊娠・授乳中の女性を配布対象に挙げた。40歳以上の成人は、放射性ヨウ素によるガン増加が立証されておらず、KIの副作用リスクも高いことから、「服用は勧められない」と結論づけている。

 配布の具体的な方法については、原子力発電所の立地状況等がそれぞれ大きく異なることから、「地元の緊急時計画担当部局が、KI配布の適切な方法や、配布地域の範囲を決めるべきだ」とし、発電所周囲十マイルの「緊急時計画区域(EPZ)」を中心に、地域により配布範囲を拡大・縮小するとの考え方を示した。

 KI配布は、事前の配布やEPZ域外の地元での備蓄、全米での備蓄など検討すべきとし、適切に貯蔵すればKIの耐用年数は長くなるとして、食品・医薬品局(FDA)に、KI錠剤の耐用年数と摂取量の見直しを行うよう求めている。


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