[原子力産業新聞] 2003年12月18日 第2215号 <2面>

[寄稿] FNCA閣僚級会合に参加して

 12月2〜4日の3日間、沖縄で開かれた第4回アジア原子力協力フォーラム(FNCA)閣僚級会議に出席した。寒い冬景色の東京から一っ飛びの沖縄は気温20度を超え、快晴で南国情緒豊かであり、会議場も以前先進国サミットが開かれた万国津梁館で、セッティングはすばらしいの一語につきた。何よりも良かったのはやや大げさに言えば人里離れた場所に隔離されたため、各国の出席者との接触が甚だ容易であり、事実公式非公式の2国間会談を頻繁に行ったが、これは町中の会議では得られないことであった。

 私はFNCAの閣僚会議に第1回から連続して出席しており、数少ない皆勤賞の1人だが、FNCAは年を追って次第に基礎が固まって来ているように思われる。FNCAは構成国をみてもわかるとおり、アジアの多様性を反映して原子力分野についても各国事情を異にする。原子力利用は大雑把に言って発電と放射線利用の2つに分かれるが、前者の原子力発電についてもすでに積極的に導入している国もあれば、ヴェトナム、インドネシアのように前向きになっている国、他方エネルギー資源に恵まれていて当分の間原子力発電を考えていない国もある。放射線の利用はFNCA各国の共通項だが、それでも発展段階には相当の違いがあり、このように多数の国々を1つの傘の下にまとめていくのは大変なことである。

 それでも、FNCAは一歩ずつ足元を固めて来たと言える。今回の沖縄での会議を振り返って私の若干の所感を順不同だが以下に述べてみたい。

 その1つは、閣僚級会議は毎年の開催地を日本とその他の国とを交互にするというアイデアで発足したが、当初は本当のところ果たして手を挙げてくれる国があるのだろうかと心配していた。だが、実際はすでにタイ、韓国が率先して会議を主催してくれているし、来年がヴェトナム、その次はマレーシア、次いでフィリピンと続いており、幸いなことに私の心配は杞憂に終わってしまった。これは各国のFNCAへの期待感を反映しているものと言えよう。

 第2は、放射線利用のいくつかの分野で協力の成果が少しずつ目に見える形で現れて来ていることである。第3に、毎年1回閣僚級の会議および上級行政官会合、数回のコーディネーター会合が開かれ、同じような顔ぶれが一堂に会するのであるから、一種のespritdecorps(団体的精神)が生まれて来ていることが挙げられよう。

 第4に、FNCAの中ですでに原子力発電国である日、韓、中に加えてヴェトナムとインドネシアが導入の方向を示し、FNCAの会議でも原子力発電にかかわる問題を取り上げては如何、例えば分科会でも開いてはとの気運が出て来ていることがあげられる。

 最後に、持続的発展と原子力の関係については風向きが少し変わって来つつあるように見受けられる。これまでは両者の関係については否定的ないし消極的な国が少なからずあったが、この問題をFNCAとして広いアングルから早急に検討してみようということになって来た。これは気候変動枠組条約の第2約束期間ではCDM(クリーン開発メカニズム)の対象から原子力を排除すべきではないと主張している私達にとって歓迎すべきことである。

 FNCAは発足してから未だ日も浅く、地味ではあるが着実に発展しているとはいえ今後改善すべき多くの課題をかかえていることも事実である。私としてはFNCAがこれらの課題に積極的に取り組んでいって、この機構が名実ともにアジアでの原子力協力の中核になることを期待している。その意味で、今回の沖縄での会議はこうした方向に向かっての前向きの一歩と評価されると思っている。

(遠藤哲也・原子力委員長代理)


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