[原子力産業新聞] 2003年12月18日 第2215号 <3面>

「アトムズ・フォー・ピース」から50年

 アイゼンハワー米大統領が1953年12月8日に国連総会で「アトムズ・フォー・ピース」演説を行い、原子力平和利用の基礎を築いてから今年で50年。これを記念して世界中で様々な記念行事が行われているが、国際原子力機関(IAEA)では4日、ブリル米国大使がアイゼンハワー大統領の胸像を贈呈した(=写真)。

 ウィーンのIAEA本部での記念式典で、ブリル大使は、「アイゼンハワー大統領は、原子力の平和利用という、原子力の全く新しい利用法を提示しただけではなく、核不拡散のためにIAEAという国際機関の設立を提唱した」と、同大統領の功績を称え、同大統領によって「軍事大国への限りのない野望が、平和への夢へと置きかえられた」と述べた。

 エルバラダイIAEA事務局長は、「アイゼンハワー大統領の『アトムズ・フォー・ピース』のビジョンは、まだ広島と長崎の恐るべきイメージが新鮮であったときに行われた」と述べ、この演説は原子力の持つ「もろ刃の剣」の性格と、原子力科学技術が平和利用のみに用いられるべきとの認識を示していると述べた。

 その上でエルバラダイ事務局長は、「やるべき多くの仕事がある。我々は忍耐を失ってはならず、信念を失ってはならない」との言葉を引用、「大統領が認識していたように、複雑な原子力平和利用の推進に忍耐強く取り組んでいく」と決意を表明した。

 一方、米国の民間団体原子力エネルギー協会(NEI)でも、50周年を記念して、コルビン理事長は、「30か国以上で原子力発電が、安価で信頼性が高く、有害ガスを放出しない電気を供給している」と述べ、さらに、RI・放射線技術も医療、農業、工業等の多分野で利用され、世界中で何億人もの人々の生活改善に役立っていることを賞賛した。

 またヒンツNEI会長は、「アイゼンハワー大統領の公約は実現した。今や米国家庭の5軒に1軒は原子力発電の電気が供給され、第2位の基幹電源として原子力発電は米産業界に不可欠となっている」と述べ、安全性、運転実績、環境等の観点から原子力発電の明るい将来を展望した。

 ドメニチ上院議員(共和党)は、ワシントンで開かれた「アトムズ・フォー・ピース」記念行事で、審議が難航している包括エネルギー法案について、これがアイゼンハワー大統領のビジョンをさらに進めるものだと演説、「原子力以外に、清潔で信頼性があるベースロード電源はない」と述べ、来年こそ同氏が推進してきた包括エネルギー法案の上院通過を確実なものにすると強調した。


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