[原子力産業新聞] 2004年1月15日 第2218号 <1面>

疑惑国の核開発にパキスタンの影濃く

【ワシントン9日共同】北朝鮮やイラン、リビアの核兵器開発の背後に、パキスタンの核開発拠点「カーン研究所」が深く関与していた事実が、米政府、国際原子力機関(IAEA)関係者の調査で浮かび上がってきた。

 共同通信が入手した資料から、同研究所が比較的最近まで、ウラン濃縮に不可欠な遠心分離機用の真空装置を各国に売り込もうとしていた事実も判明した。

 同研究所科学者に事情聴取したパキスタン当局から説明を受けている米政府は、ムシャラフ政権の組織的関与を否定するが、専門家は「米国で言えばローレンス・リバモア研究所の科学者が核情報を売り渡していたも同然」と批判。

 北朝鮮とイランの核開発に共通するのは「G1」「G2」と名付けられた遠心分離機のデザイン。パキスタンの「核開発の父」と呼ばれるカーン博士が1970年代、オランダにある国際企業体の技術を独自に改良、パキスタンでは「P1」「P2」と呼ばれる。

 元IAEA査察官のオルブライト科学国際安全保障研究所所長は「イランの遠心分離機はP1のデザインと同じ」と指摘。一部から高濃縮ウランが検出されたことから、パキスタンで使用された遠心分離機が90年代半ばにイランへ輸出されたとの見方を示した。

 北朝鮮はより進んだ「P2」タイプを使用しているとされ、昨年欧州で摘発された関連機材も同じ種類。カーン研究所と北朝鮮の提携関係は広く知られている。

 依然未解明なのは、実際に機材製造、調達を行う地下のシステム。リビアが利用したドバイやマレーシアに生産、調達拠点が点在しており「闇のネットワーク」の解明が今後の焦点だ。


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