[原子力産業新聞] 2004年1月15日 第2218号 <3面>

[米ハーバード大] 直接処分と再処理のコスト比較 報告書

 米ハーバード大学はこのほど、「使用済み燃料の再処理と直接処分の経済性」と題する報告書を発表した。これによると、再処理コストが重金属キログラム(kgHM)あたり千ドル(10.6万円)の場合、直接処分と、再処理・軽水炉でのプルトニウムリサイクルの経済性が平衡するウラン価格は、360ドル/キログラムウラン(kgU)と予測、現在のウラン価格(約40ドル/kgU)と比較すると「今後一世紀以上にわたって直接処分が有利」としている。

 この研究は、米エネルギー省(DOE)等の資金援助により、ハーバード大学J・F・ケネディースクールのM・ブン研究員らのグループが行ったもの。様々なシナリオにもとづき、使用済み燃料を直接処分する場合と、再処理・リサイクルする場合とのコストが平衡するウラン価格を求めた(=グラフ参照)。同様に、高速増殖炉が軽水炉でのワンススルー方式と経済的に競合できるウラン価格も求めた。

 報告書は、「過去何十年間にもわたり、使用済み燃料管理の最良の方法について激しい議論が行われてきた」とし、「現在の低いウラン価格と濃縮価格では、再処理・リサイクルが、直接処分より割高との全体的な合意がある」と述べ、問題はその差の程度だとした。一方、一国が再処理を採用するさい「経済性は主な理由ですらない」としつつも、再処理路線を採ることが「どのくらいのコストになるのか、知ることは重要」と述べている。

 調査の結論として、ウランが現在の約40ドル/kgUの場合の発電コストへの影響では、直接処分のコストは0.15セント(0.16円)/キロワット時、再処理コスト千ドル/kgHMとすれば、再処理・リサイクルでさらに0.13セント(0.14円)/キロワット時かかり、直接処分より80%割高になるとしている。

 日本の総合資源エネルギー調査会コスト等検討小委員会へ昨年12月に提出された資料では、日本の再処理コストは約34.4万円/kgHMとされている。(割引率は、ハーバード大学が3%プラスインフレ率、日本は3%)。

 一方、FBRでのリサイクルの場合、FBR建設費が軽水炉よりキロワットあたり200ドル(21000円)割高とすると、軽水炉とFBRが経済的に均衡するウラン価格は340ドル/kgU、発電原価は0.7セント(0.7円)/キロワット時、割高となる。FBR建設費が軽水炉並みに下がった場合は、均衡ウラン価格は140ドル/kgU、発電コストは0.2/キロワット時、割高としている。

 報告書は結論として、今後数十年間にわたり、直接処分とプルトニウムリサイクルが均衡する360kgU以下の価格で、数千万トンのウランが供給可能であり、原子力発電が急激に増えた場合でも、1世紀以上、ワンススルーが競争力を持つとしている。


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