[原子力産業新聞] 2004年1月22日 第2219号 <1面>

[原子力安全委] 安全文化醸造への課題 取りまとめ

 原子力安全委員会は、2001年7月から昨年12月まで、国内21か所の原子力発電所、燃料加工工場等の施設で、課長・当直長クラスの関係者と意見交換を行い、安全文化醸成のための知見や重要課題を取りまとめ、15日発表した。

 報告書では、現場から寄せられた安全文化醸成の事例を、職員個々人のモチベーションやモラルを高めるための取り組み、ミスを教訓とするための取り組み、学習・訓練、組織的マネジメントの効果を上げるための取り組みに分類して取りまとめている。

 例えば、同じミスを繰り返さないためには、原因追及の徹底が重要である。このため、ミスを積極的に報告する姿勢を推奨するとともに、報告されたミスを懲罰の対象としないという認識を管理職クラスが持つようにしているとの事例から、ミスから追求すべきは個人の罪状ではなく、再発防止・安全確保への教訓であり、ミスの報告を推奨、罰しないなどの工夫が必要との知見を導き出している。

 また、マニュアルは過去の成功体験の集大成であるが、その行間や背景にある安全確保の意味を理解するため、マニュアルの鵜呑み防止と、その多角的理解のために、訓練対象者自らがマニュアルを作成するとの事例から、成功体験には賞味期限があり、時には腐敗するので、鵜呑みにはせずに確認・熟考を心懸けるとの知見を得たとしている。

 原子力の世界は同質性が高く、外の社会とは異なる判断基準や価値観を持つという独善的な状態に陥ることを防ぎ、一般社会の視点を認識するために、若手社員に地元説明を経験させるとの事例から、距離を置いた視点から自分と組織を眺める姿勢を身に付けるとの知見を得たとしている。

 さらに、現場から寄せられた安全文化に関する重要課題を、@原子力を取り巻く環境の変化の激しさに関連する課題A職員の意識のあり方に関連する課題B経験・技術継承の困難さに関連する課題C施設内・外のコミュニケーションの困難さに関連する課題――として取りまとめている。

 例えば、新入の若手職員の中には、原子力に対する国民や地域社会の厳しい目を意識、萎縮する者がおり、業務に誇りを持てず、モチベーション維持が困難との事例に対して、逆境、プレッシャーを逆手に取ること、日頃からメディアとの対話を心がけ、情報の公開、透明化を進めるとの示唆を行っている。また、現場での意識不足によるミスをへらすには、業務のなかで安全行動、安全確保を職員に強く意識させていく以外にはないとの事例に対して、職員一人ひとりが自分の業務、活動の安全に関して、常に問い直す姿勢を持つとの示唆を与えている。


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