[原子力産業新聞] 2004年2月26日 第2224号 <1面>

[原産] 今後10年間見通し「提言」

 日本原子力産業会議は23日、東京・千代田区の霞山会館で記者会見を開き(=写真)、「向こう十年間に何をすべきか」と題する20項目の提言を発表した。このなかで、電力自由化の下、原子力発電等が公正な競争条件を得るために、原子力発電の地球温暖化防止等への貢献を考慮した諸電源の外部コストの内部化、原子燃料サイクルの確実な推進、新規原子力発電所建設促進へ向けた規制環境の整備、軽水炉に対する科学的合理的な規制制度の整備など提言。また、原子力産業の活性化と近隣アジア諸国への原子力プラント輸出に向けて、ベトナム等との原子力協定締結や、ファイナンス制度等の環境整備を求めている。

 この提言は、原産の原子炉開発利用委員会(委員長代行=宅間正夫原産専務理事)がまとめたもの。原子力政策について、国への要望のみならず、原子力産業界が自ら取るべき行動についても取り上げている。

 提言は、原子力への社会的信頼の低下や電力市場自由化など、原子力発電と原子燃料サイクルを巡る環境変化を踏まえ、継続的に不断の配慮が必要な課題として、@技術の維持・継承A国民の相互理解と信頼−−を指摘。セ−フティ・カルチャ−と普及、およびリスクコミュニケ−ションの推進を求めている。

 一方、至近の課題に関しては、@電力自由化下で原子力発電および原子燃料サイクルの役割の再確認A原子燃料サイクルの推進B放射性廃棄物対策の推進C原子力の研究開発D原子力産業の活性化と輸出−−を取り上げて提言。サイクルの推進については、再処理事業に関して国際レベルに整合した科学的合理的規制の確立を求め、また、MOX燃料加工事業に関して、「効果的かつ効率的」な保障措置の構築を求めている。

 放射性廃棄物対策について、日本原燃のように一か所に複数の事業所がある場合、廃棄物を主たる事業所で、一括して性状別に処理・貯蔵管理する「性状別規制」への変更を提言、また、TRU廃棄物と高レベル廃棄物の「併置処分」や、海外再処理からの返還される低レベル廃棄物を、高レベル廃棄物で置き換えて返還を受ける「単一返還」など、合理的な規制制度のあり方を検討するべきだとしている。

 わが国が原子力を基幹電源として維持するためには、健全な原子力産業の維持が必要であり、そのためには、ベトナム等、原子力導入への動きを進める近隣アジア諸国への原子力輸出が重要と指摘。このため国に対して、原子力機器や原子力技術の輸出に備え、原子力協定の締結や、ファイナンス制度等の環境整備を行うよう求めている。(本提言の概要を3月11日号にて詳報の予定)


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