[原子力産業新聞] 2004年2月26日 第2224号 <3面>

[原子力損害賠償条約] 改正へ署名開始 賠償額15億ユーロへ増額等

 原子力の第3者損害賠償責任に関するパリ条約と、パリ条約を補足するブリュッセル条約を改正するため、12日、経済協力開発機構(OECD)本部で署名が行われた。同条約改正により、原子力事故のさいの補償額が増額され、その適用範囲が拡大されることになる。

 改訂パリ条約では、原子炉運転者の賠償責任額が最低七億ユーロ(約950億円)に増額される。さらに、低リスク施設および輸送活動に適用される最低賠償責任額は、それぞれ7000万ユーロと8000万ユーロに増額される。

 本条約では、「原子力損害」の詳細な定義が行われ、これに伴い、経済的損失、環境修復コスト、環境損害によって生じた収入損失、予防措置コストなどが定義される。パリ条約がカバーする地理的範囲もかなり拡大される。

 改正ブリュッセル補足条約では、3層にわかれた補償がかなり増額される。第一層は、パリ条約下の最低賠償責任の七億ユーロで、運転者によって保証されるが、それができない場合には、施設の存在する国の公的資金によって提供される。第二層は、5億ユーロにのぼり、施設の存在する国の公的資金によって賄われる。第3層は、3億ユーロで、すべての同条約締結国の公的資金で賄われる。

 改正パリ―ブリュッセル条約制度の下で適用される総補償額は、総額15億ユーロになる。現行の総賠償額は、3億ユーロIMF・SDR(約3億5千万ユーロ相当)。

 今回の改正条項の発効には、個々の条約締結国の批准が必要となる。


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