[原子力産業新聞] 2004年3月11日 第2226号 <3面>

[シリーズ] 原子力広報に関する国際会議(3)

先週号に引き続き、原子力広報に関する国際会議「PIME2004」でのP.ヘーレン・スイス原子力協会(SVA)事務局長が行った講演を「説得への3か月――スイス国民投票での勝利」を紹介する。

スイスの経験から学ぶ

▽ 我々の発表の正式タイトル「スイスの国民投票における成功」には、「説得までの3か月」というフレーズが、まるで魔法の公式のように付け加えられているが、実際には3か月という期間は、原子力に関する国民投票を勝ち抜くにはあまりに短すぎる。2003年の勝因は、パブリックアクセプタンスを獲得するための20年〜30年にわたる努力と、1979年、84年、90年に行なわれた過去3回の国民投票で得た経験である。

とは言うものの、投票までの最後の数週間に行った広報活動で、正しい戦略をとったことが最も大きな勝因であったこともまた事実である。

逆説的に聞こえるかもしれないが、今回のスイスの国民投票の成功の特徴は、原子力を擁護するキャンペーンを行わなかったことにある。その代わりに、政界と経済界が強く連携して、集中的かつ一貫した広報活動を繰り広げ、段階廃止のリスクと対価を強調した。

スイスの国民投票の成功には、PIME関係者からの貢献も明らかである。実質的な経験に関する情報交換を行うというPIMEのメカニズムのおかげで、スイスの原子力産業界の広報担当者は、海外から多くを学ぶことができた。特に、英国が1990年代初めにセラフィールドの見学者センターを観光スポットにしたという体験談は、原子力を「当たり前のもの」にするため、市民との対話に完全にオープンな姿勢で臨むという我々の態度が正しいと確認させてくれ、その実施の促進を後押ししてくれた。

「思い込み」対「政治的現実」

全PIME参加者が参加した話し合いでは、いくつかの発言が、原子力を伝える際の不文律を代弁した形となった。

例えば、

▽「原子力産業界を代表する者として、人間の顔を見せよ」

スイスでのキャンペーンでは、原子力の段階的廃止に対する反対理由を論理的に伝えて、国民投票を成功させた。

▽「投票日の直前には、原子力事故が1件たりとも起こってはならない」

それどころか、パクシュ発電所で、実力に定評のある西側の原子力産業界も巻き込んだ事象が起こるという、最悪の事態が発生した。これまでの原子力産業界の定説によれば、この事象は我々の命取りになるはずであった。ところが、マスコミの報道劇はハンガリー国内のみに留まった。投票日の5週間前に発生した、技術的に深刻なパクシュ発電所の事象に関する報道は、スイス国内では一切なかった。

▽「原子力エネルギーに関する国民投票で成功を収めるためには、どのような場合でも、放射性廃棄物の最終処分問題の解決を進めることが必要である」

ところが我々は、段階的廃止をめぐる国民投票のわずか8か月前に、ニートヴァルデン州のヴァーレンベルク山に調査用シャフトを建設する案についての州民投票で、負けてしまっている。この州民投票は、1995年の最初の試みに引き続き、2回目であった。この結果、ヴァーレンベルクに低レベルかつ短寿命の放射性廃棄物用最終処分施設を建設することは断念された。ただ、この時の深刻な打撃の影響は、国民投票には見られなかった。

(終わり)


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