[原子力産業新聞] 2004年3月18日 第2227号 <1面>

[原子力委] 「意見聴く会」専門家から意見聴取進む

 原子力委員会は8日、12日、16日に東京・虎ノ門の3井ビルでそれぞれ第6、7、8回「長計についてご意見を聴く会」を開催した。第6回は新聞社から論説委員5氏、第7回は東京農工大学大学院の柏木孝夫教授、第8回は京都大学大学院の植田和弘教授などを招いた。第6回の5氏は朝日新聞・竹内敬二論説委員、産経新聞・飯田浩史論説顧問、日本経済新聞・塩谷善雄論説委員、毎日新聞・菊池哲郎論説委員長、読売新聞・井川陽次郎論説委員。

 各氏とも軽水炉が基幹電源として今後も重要な位置を占める、という点は一致したが、核燃料サイクル政策では飯田氏と井川氏の推進に対し、竹内氏と塩谷氏は再検討すべきとした。

 飯田氏はワンススルーの場合、どのような方法で何処に処分できるか検証すべきであり、原子力発電所の使用済燃料貯蔵量の増大に対応し、早期に完成させるべきと指摘。井川氏は、原子力のシェア維持のために着実に進めるべきで、現在は原子力を如何に維持するかという危機感が必要な状態であり、技術開発推進が必要とした。

 竹内氏は再処理工場の運転を一時凍結し、多くの齟齬があるサイクル計画を時間をかけて見直すため、原子力委員会はこれを議論することを示すべきとした。塩谷氏もサイクル政策はコンセンサスを得られていないのが実情であり、再検討すべきと提言。菊池氏は技術開発を進める上では様々なトラブルが発生する、という社会認識が醸成されておらず、いくつかのシナリオを示し、国民に選択肢を与えるべき、と指摘した。

 第7回会合で柏木教授は、エネルギー自給率向上のため、分散型・オンサイト型電源の推進、原子力継続の重要性、核燃料サイクルの推進など提言。自給率を現在の20%から2030年に30〜35%に引き上げるため、発電量に占める原子力の構成比を40〜45%に拡大、大規模集中型電源70〜80%、分散型電源20〜30%の構成比にすべきとした。また、集中型と分散型は、従来の2者択一型から脱却、共存型にすることが重要とし、間欠性電源の太陽光や風力と燃料電池を組み合わせたネットワークシステム技術が必要と提言した。

 植田教授は、環境経済政策学の立場から提言。長計策定は原子力発電に対する国民的不一致、外部条件の変化、意志決定方法、コストなど正当性の証明と手続き、リスク・不確実性と意志決定手続きなどへの考慮が必要と指摘した。国民的不一致では考え方の多様化により不一致の範囲が拡大しているとし、合意形成のためには何よりも議論のためのプラットフォーム作りが必要と指摘した。


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