[原子力産業新聞] 2004年3月18日 第2227号 <2面>

[電中研と日立製作所] 新しい耐震試験技術を開発

 電力中央研究所と日立製作所は2日、日立インダストリイズと共同で、部分構造物の振動試験(準静的載荷試験)と残りの構造部分の数値解析(非線形FEM解析)とを組み合わせた、ハイブリッド耐震試験技術を開発したと発表した。原子力機器、橋梁、高層ビルなど大規模構造物に対し、塑性変形領域での挙動予測を比較的小規模な実験で行えるようになったため、今後は各種の大規模構造物の耐震性向上に寄与するものとして期待されているという。

 耐震試験において、振動台試験では構造物の大きさや質量の制限があるため、従来は構造物を部分構造物と数値モデルとに2分し、部分構造物の試験と数値モデルの解析との両者の境界面でデータを受け渡ししながら連携する「ハイブリッド試験」と呼ばれる試験手法が用いられていた。しかし同試験方法には@計算機の能力制限などから、数値モデルとして構造物を簡略モデル化した単純なバネ・質点系しか取り扱えないA振動試験と数値解析と別々に結果が上がるため、構造物全体の挙動を総合的に理解しにくい――という課題があった。

 今回開発されたのは、構造物の形状をほぼそのままの形で数値モデル化出来、かつ構造物全体の挙動をビジュアルに把握できるハイブリッド耐震技術で、「振動試験と非線形FEM解析の連携技術」および「統合可視化技術」が主な特長。プラントなどに設置される配管系を対象に、曲管部を含む部位を実構造物とし、延長管や弁・サポートなどを有限要素法による数値モデルとして構造物全体に地震波を発生させ、曲管部を弾性範囲内および塑性範囲まで変形させることにより、同技術の成立を確認したという。

 電中研と日立はまた、部分構造物に設置した変位計とひずみゲージの計測値ならびに数値解析結果を同時可視化し、統合化しか技術の有効性を確認。「今後、本システムが耐震試験に適用されて構造物の耐震性向上に寄与することが期待される」としている。

 なおこれら技術は、電中研が進めている研究設備「ハイブリッド動的力学試験システム」の耐震試験の要素技術として組み込まれ、実用化される予定ということだ。


Copyright (C) 2004 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.