[原子力産業新聞] 2004年3月18日 第2227号 <3面>

[IAEA理事会] イラン・リビア問題で決議 6月理事会で決着へ

 8日からウィーンで開かれていた国際原子力機関(IAEA)理事会は、13日まで会期を大幅に延長し、イランとリビアの保障措置協定違反に関する決議を採択、閉会した。

 13日に採択された「イランにおける核不拡散条約(NPT)保障措置協定実施状況について」と題された決議では、イランが昨年12月に追加議定書に署名したこと、発効までの間、同議定書に従うと宣言していることに「満足」を表明、しかし同議定書がまだ批准されていないことを指摘した。

 さらに、昨年10月、イランが提出した同国の原子力活動に関する「完全」な報告書に、「過去と現在の完全な姿が描かれていなかった」と指摘。特に、@より進んだP2遠心分離機の開発Aレーザー濃縮計画で使われていた2基のマススペクトロメータBアラク重水炉でのホットセルの設計と建設――などの情報が記載されていなかったことに「深い懸念」を表明した。

 また、遠心分離法による濃縮技術開発についても多くの疑問が残されているとし、さらには最近明らかになったポロニウム210の生産と実験などにも「深い懸念」を表明している。

 このうえで、IAEA事務局長に対し、未解決の問題について5月末までに報告をまとめるよう求め、6月理事会で検討することを決めた。6月理事会では、国連安全保障理事会への付託も含めて、イラン問題への対応が議論されることになる。

 一方、10日に採択されたリビアの保障措置協定違反に関する決議は、リビアが昨年12月、核兵器を含む大量破壊兵器開発の中止を決めたことを、「アフリカと中近東での大量破壊兵器廃絶地域に向けた1歩」と歓迎。その後の廃棄や査察への協力に満足の意を示しながらも、過去の保障措置協定への違反に懸念を表明、IAEA事務局長に対して安保理に、「情報として」この違反を伝達するよう求めている。

 また、IAEA事務局長に、次回の6月理事会でさらに詳しい報告を求めるとともに、リビアが保障措置協定と追加議定書に基づいて査察に全面的に協力するよう求めている。(今理事会後に公表されたイランの核開発に関するIAEA事務局長報告の概要を、4月1日号から連載の予定)


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