[原子力産業新聞] 2004年4月1日 第2229号 <3面>

[IAEA] イランの核開発の状況 @

本紙3月18日号3面にて所報のとおり、国際原子力機関(IAEA)理事会は13日、イランの保障措置協定違反を非難する決議を採択した。今号から3回のシリーズで、同理事会に先立つ2月24日、理事国に配布されたIAEAの「イランにおけるNPT保障措置協定実施状況について」と題する報告書の概要を紹介する。同報告は、イランが高性能の遠心分離器P―2について、外国から設計図を入手、国内で生産が行っていたことを認めるなど、保障措置協定に違反した新たな未申告の活動に、深刻な懸念を表明している。

ウラン転換

イランは昨年末、イスファハン原子力技術センター(ENTC)にウラン転換施設を設計し、建設中とIAEAに申告したが2004年1月にIAEAが訪問した際に、イランは外国から提供された図面と技術報告書を見せた。

この施設は19・7%濃縮ウランを金属ウランに転換するもの(年産30kgの容量)と、天然ウランフッ化物を金属ウランに転換するものである。

この転換施設で製造される予定の金属ウランの使用目的についてイラン側は遮蔽材料のほかレーザー濃縮にも使用すると説明した。イランは転換に関してベンチスケールの試験を行ったことを認めた。試験や実験に際してもっと多量の核物質が使用された可能性は否定できないが、かなり時間が経過していることでもあり正確に確認することは難しい。

ウランの研究炉での照射と再処理実験

イランはテヘラン研究炉(TTR)で7kgの減損ウランを照射してうち3kgを再処理したと説明した。

2003年11月に2つの小さな瓶に入ったプルトニウムの溶液を示された。IAEAはサンプルを採取したがまだ結果は出ていない。イラン側は生成されたプルトニウム量を約200μgと推定している。この量は、3kgのウランから生成される推定量よりもかなり少ない。この件は引き続き検討中である。

TTRで金属ビスマスが照射されていたとの記録が見つかった。ビスマスは保障措置上申告対象の物資ではないが、これからポロニウム210が製造出来ることでIAEAは関心を持っている。すなわちポロニウムは一般的な用途の他に、ベリリウムと混ぜて核兵器の起爆装置に使われる可能性があるからである。

この件でインタビューを受けたイランの科学者は、分離実験が失敗したと言い、また、ポロニウムの製造は、原子力電池の開発が目的であったと述べた。しかしイラン側は、2004年2月のウイーンでの打ち合わせの際、これはイランが輸入規制のために入手できない中性子源を製造する目的であったと述べた。

この件については、まだ未提出の記録もあるとのことで、さらに検討を続ける。

(続く)


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