[原子力産業新聞] 2004年4月15日 第2231号 <2面>

[原子力安全委] 03年版安全白書を公表

 原子力安全委員会は9日、2003年版原子力安全白書を閣議に報告、公表した。今回の白書は、「リスク情報を活用した原子力安全規制への取組み」の章で、工学的判断に基づく決定論的評価において十分な余裕を見込む従来の方法を補完するものとして、リスク情報を活用する原子力安全規制への取組み状況について説明しているのが特徴となっている。

 リスク情報を用いた安全規制の取組みとは、リスク情報を、(1)公衆に災害を及ぼす可能性のある大事故(過酷事故)が起こることについて評価した確率(2)系統・機器等が過酷事故の発生確率にどの程度寄与するかについての定量的情報と定義し、大事故の発生確率と事故進展の解析、地理・気象条件などによる影響評価を勘案して健康リスクなどの確率論的安全評価を行う──もの。発電用原子炉での運転経験に基づく事故・トラブルのデータや、施設の事故に関する研究成果の蓄積により、リスクが顕在化する確率を定量的に評価する技術(リスク評価技術)が向上してきたことから、活用が可能となった。

 また白書では、リスク情報活用の意義として、安全確保を定量的に評価・確認することにより、安全規制の合理性、整合性、透明性を向上させることができること、リスク情報の活用により、安全性の重要度を考慮して、安全規制のための資源(人材、物質、資金)を適正に配分することなどを提示。今後の導入への取組みとして、(1)多重防護の考え方を堅持した上で、工学的判断や決定論的判断に基づく従来規制をリスク情報を用いて補完・高度化していく(2)検査の重点化など、運転・保守段階の安全規制に対して、リスク情報の活用を導入する(段階的導入)(3)国民の広い理解を得る努力を継続的に進める(4)原子力安全委員会は概ね3年内を目処に進捗状況を評価し、リスク情報を利用した安全規制への進展を図る──を挙げている。

 原子力安全委は昨年12月、定量的な安全目標を明らかにする取組みとして、「安全目標に関する調査審議状況の中間取りまとめ」を行った。定量的目標案として、原子力施設の事故に起因する、施設敷地境界付近の公衆個人の放射線被ばくによる平均急性死亡リスクは、年当たり百万分の一程度を、また施設からある範囲の距離にある公衆個人の放射線被ばくによって生じ得るがんによる平均死亡リスクは、年当たり百万分の一程度をそれぞれ超えないように抑制することを規定している。

 白書はこのほか、第二編「平成十五年の動き」で、「定期安全管理審査制度」「健全性評価制度」等の、抜本的に改革された安全規制も紹介している。


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