[原子力産業新聞] 2004年4月15日 第2231号 <3面>

[IAEA報告書より] イランの核開発の状況 (3)

 先週号に引き続き、国際原子力機関(IAEA)が2月24日、理事国に配布したイランの核開発および保障措置協定違反に関する報告書「イランにおけるNPT保障措置協定実施状況について(GOV/2004/11)」から、イランの重水炉計画、ウラン濃縮・再処理の停止と総括の部分の概要を紹介する。

重水炉プログラム

 

 2003年にイランは重水製造プラントと重水炉(研究炉IR−40)の建設を申告した。IR−40の燃料を製造するプラント(FMP)の初期的な設計情報も提出した。

ウラン濃縮と再処理に係わる活動の停止

 2003年11月10日にイランはIAEA事務局長に対してウラン濃縮と再処理に関する活動を一時中止すると通告した。12月29日および2004年2月24日にも追加の通告がなされイランはナタンズの施設が唯一の遠心機濃縮の場所であり、一時停止期間の間、同位体分離のための施設を他に作ることは無いこと、さらに遠心機の輸入および国産、運転など全ての濃縮についての活動を一時停止することを明らかにしIAEAにこの手段を検認することが出来るとした。またレーザー濃縮プロジェクトも解体し全ての関連の機器を除去したこと、プルトニウムの分離する設備の建設や運転を行わないとした。

 2003年11月12日にイランはウラン濃縮パイロットプラントの全ての遠心機を停止し、この施設はIAEAの監視下にある。過去イランは920基の遠心機を製造したがこれらは全てIAEAによって封印されている。再処理についても、以前にプルトニウム分離実験に使われたホットセルや機器は立ち入りや衛星写真によってIAEAでモニターされている。

評価と次のステップ

 イランは、多くの点で非常に協力的であり、信頼性向上に役立っているが、問題は残っている。P-2遠心機の設計図面を所有し、これに関連する製造および機械試験を行ったことを未申告であったことは深刻な懸念事である。このことはイランが遠心機に関する完全な過去の経過の説明をすると言明したことと反するものであり、IAEAは改めてイランに原子力プログラムの詳細の全てを明らかにする重要性を強調したい。

 次にIAEAはカライ電気会社などでの低濃縮ウランおよび高濃縮ウランの汚染を重要な未解決の事項と考えている。IAEAはイランに遠心機および機器の出所の詳細およびそれに係わる情報のすべての提供を求める。またこの問題の解決は、これらの機器を輸出した国の協力にかかっている。

 その他の問題としてはレーザー濃縮についての研究の詳細さらにポロニウム210の製造で、イランの主張を支持する情報が無いことから問題として残っている。

 イランとリビアの転換と濃縮プログラムは、基本技術は同じ外国が起源などの共通点がある。イランとリビアの申告の内容を実証するために、加盟国の協力により供給ルートと供給源の調査を実施している。

 IAEAは引き続き未解決の問題についての努力を続ける。事務局長はイランにIAEAとの協力を継続しさらに強化するように要請する。事務局長は2004年6月の理事会または早い機会に報告を行う。


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