[原子力産業新聞] 2004年4月30日 第2233号 <4面>

[原産] 年次大会特別講演 米仏中原子力トップ3氏語る

 年次大会初日21日午前に行われた特別講演では、3か国から原子力関係機関のトップが、それぞれの国における原子力開発や原子力規制の現状と展望を語った。フランス原子力庁(CEA)A.ビュガ長官が、「フランスの原子力開発政策の現状」、続いて、康日新.中国核工業集団公司(CNNC)総経理が「中国のエネルギー戦略における原子力の位置付けと原子力開発の現状」、次に、米国原子力規制委員会(NRC)のN.ディアス委員長が、「米国原子力安全規制の現状と将来展望―21世紀の規制計画」と題する講演を、それぞれ行った。

規制のあり方に警鐘
ディアス米国NRC委員長「社会に損失も」

 米国の原子力規制体制は完成し機能しているが、同時に移行期にある。我々は、従来からの方法の上に、リスク情報を用いパフォーマンスに応じた規制の導入など、最新の安全手法を開発、試験、導入している。従来からの規制体系は、1960年代、70、80、90年代のものをパッチワーク的につなぎ合わせたもので、良く機能しているとは言え、運転中の原子力発電所には十分に効率的とは言えず、新世代の原子炉には十分でも効率的でもない。

規制の適切な役割

 私は将来の原子力の見通しは明るいと考えている。しかし、原子力の活力や成長は、規制と密接に関係しており、強力で予見可能かつ信頼できる規制機関が必要だ。規制は社会にとって原子力が、予見可能で有益であることを保証するためのツールである。「規制は、社会に利益をもたらさなければならない。さもなければ、規制は社会に損失をもたらす」と私はしばしば言っているが、これは特に原子力によく当てはまる。

 規制は活動を制限するが、活動の便益を妨げるのではなく、その活動の枠組みを作り、誘導する役目をする。最少限の規制によって目的を達成することが、我々の社会にとって最良のことである。

 一方、悪い規制は「多すぎるか、少なすぎる」コントロールをしようとし、抑制や管理に主眼を置き、公益の視点を見失う。これは、民主的社会や自由市場の原理に対する直接的な矛盾である。下手な規制は、個人に至るまでの自由を剥奪しながら、「防護的」との幻想を振りまく。

 より「防護的」に見え、「保守的」にするために、規制を増やすことはたやすい。規制を増やすことは誘惑的ですらある。私は、正しい目標は「より少ないが、より上質の」規制によってもたらすことができると考える。これは、我々の社会が強力な「自己修正性」を持つからだ。

 規制の基準は「公衆の健康と安全に対する、適切な防護の合理的な保証」である。NRCはゼロリスクの業界にいるわけではない。我々の責任は、リスクが理解され、管理され、それが受け入れられるほど低いことを保証することにある。リスクを「ゼロ」にすることは選択肢にはなく、むしろ混乱を招く。

2020年頃原子炉建てかえ必要
ビュガ仏CEA長官

 仏国民は、エネルギー自立、エネルギー価格の変動のみならず、温暖化ガスによる気候変動に大きな懸念を抱いている。将来のパブリック.アクセプタンスを考えるさい、持続可能な発展や環境保護がより重要になると考えられ、原子力界はこれに貢献できることを示さなければならない。

 今年5月にEUへ新たに10か国が加盟、うち5か国が原子力発電所を運転していることから、EU内の原子力発電国は25か国中13か国に増加する。

 最近ラファラン首相は、仏が欧州加圧水型炉(EPR)建設にコミットする必要があると宣言した。現在仏では、58基・6300万kWの原子力発電所が運転中だが、近い将来、原子力のシェアは間違いなく下がっていく。

 将来、第4世代原子炉が建設される前に、EPRのフェーズが出現することは不可避である。仏で現在運転中の原子炉の寿命が40年間に延長されれば、原子力発電所の停止は2015〜20年頃に始まる。仏では、原子力発電所が短期間で大量に建設されたことから、ほとんど同時に寿命を迎えることになり、この更新が大きな問題となる。たとえば、2020年には14基が40年の寿命を迎える。2025年には更に34基が寿命を迎え、これは仏総発電設備の50%にあたる3100万kWに相当する。これらを代替するには、この時期に運転が可能な第3世代炉が必要だ。

 アレバグループが開発したEPRは、2015〜20年頃に運転が可能で、70年代初期に建てられた原子炉が停止するさい、この代替となりうる。仏政府は、数か月以内にEPR実証炉建設の決定を下すものと期待している。フィンランドのEPR導入決定は、この炉がより安全で、廃棄物発生量が15%少なく、発電コストが10%低い優れたものであることを裏書きしている。

 今後40年間は、第2世代炉と第3世代炉が混在し、2030〜40年頃に自然に第4世代炉に移っていくと考えられる。

2020年に原子力4000万kW
CNNC康総経理 国産化も推進

 中国核工業集団公司(CNNC)は原子力技術の主要開発機関であると同時に、中国のすべての原子力発電所の主要投資家である。

 第10次5か年計画における中国政府の「原子力発電を適度に開発する」との原則、および「補強的な国産化原子力発電プロジェクトを適宜開始する」との目標は、中国のエネルギー開発における原子力発電の立場と重要性を確認するものである。中国での原子力発電シェアは1.2%、1次エネルギー供給でのシェアも非常に小さいため、原子力発電は中国のエネルギーミックスにおいて実験的で補完的な電源に位置付けられている。

 急速な経済発展、人々の生活水準の改善、急速に増加する電力需要などのため、現在中国では電力不足の地域があり、2003年だけでも、電力消費を削減するため、22の省や市で電力供給カットが行われている。1981〜2000年に、経済は年平均9.7%、電力需要は7.9%増加しており、2020年には発電設備は9億kWになる予想だ。

 このため、中国の関係省庁は、2020年に全発電設備の4%、3600万〜4000万kWを原子力にするのが適当との調査をまとめ、これは、今後16年間に2700万〜3000万kWの原子力発電所を建設することを意味する。

 中国では現在、6か所の原子力発電所で11基が運転中か建設中であり、うち8基は商業運転中、3基が建設中。建設中の3基は2005年末までに商業運転を開始する見込みで、原子力発電設備容量は80万kWに達する。

 中国は現在、30万と60万kW・PWRを含む中小規模のPWRの自主建設能力を持つ。また100万kW級の大型PWRの自主設計能力と、機器の現地製造基盤を有している。


Copyright (C) 2004 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.