[原子力産業新聞] 2005年10月27日 第2305号 <1面>

[総合資源エネ調査会・電気事業分科会] 「経済的措置」を大筋了承

 経済産業省は21日、東京・港区の三田共用会議所で総合資源エネルギー調査会・電気事業分科会(会長=鳥居泰彦・慶應義塾学事顧問)を開催(=写真)、制度・措置検討小委員会がまとめた、バックエンド費用の外部積立や電力託送の仕組みを利用した未回収費用の処置など、バックエンドに関する「経済的措置」を報告、議論を行い、大筋で了承を得た。分科会の席上経産省は、バックエンドコストの未回収費用と将来発電分の電気料金への影響が、一世帯あたりおよそ月間42〜54円になることを明らかにした。

 経産省はまた、電気事業分科会に「官民役割分担の考え方」案を提示。バックエンド事業は「民間事業である以上、事業に付随するリスクは当該民間事業者に帰することが基本」としながらも、国際関係等から国が事業者の意志に反して事業の停止を求める場合は、「別途の議論が必要」とした。さらに、サイクル施設の稼働率低下リスクについても、事業の不確定性に対応するため、経済的措置の設計で「柔軟性に十分考慮する必要がある」と含みを持たせた表現をしている。

 制度・措置検討小委が、経済的措置の対象となるバックエンドコストを、再処理に直接関連のあるものに絞ったことから、バックエンド総額18.8兆円のうち、措置の対象は6.2〜4.1兆円に圧縮。既発電分の未回収コストについては、回収期間を15年で、託送料金への上乗せ分は割引率2%でkWhあたり9〜13銭(各々既存の引当金に経過期間中利息を付ける場合と付けない場合)、一方、将来発電分は同じく5銭/kWh程度となった。

 電気事業連合会の藤洋作会長は、措置の対象となるバックエンドコストの範囲について、再処理引当金など現行の措置の対象になっていないもの全てをカバーすべきと小委の結論に異論を表明、また、小委で意見のあった日本原燃への公的関与について、電力料金の上昇を防ぐために「公的関与がなくとも、コストダウンのインセンティブは十分働く」と述べた。

 専修大名誉教授の鶴田俊正氏は、「安全性、経済性を考えると再処理は正当化できない」とし、直接処分と再処理路線との精度の高い経済性比較を求めた。また、欠席した八田達夫・国際基督教大学教授は書面で意見を陳述、「再処理の是非に関する原子力委員会の決定が行われるまでは、当分科会では、バックエンドの費用回収・積み立て方式を決めるべきではない」とした。

 内外情報研究会の河野光雄会長は、「再処理が働かなくなると、原子力発電所が動かなくなるおそれがある」とし、核燃料サイクルの方向性を立ち止まって考えると、混乱を起こす可能性があると指摘した。

 植草小委員長は、今回出された意見や経産省から出された数値を、小委員会でさらに検討、6月中旬に開かれる次回電気事業分科会で報告する方針だ。


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