[原子力産業新聞] 2004年6月3日 第2237号 <2面>

[原子力総合シンポ] 説明責任等テ−マに開催

原子力関連39の学協会は、共同主催で、「第42回原子力総合シンポジウム」を5月27、28日の両日、都内の千代田区立内幸町ホ−ルで開催した。

「原子力は、社会への説明責任をいかに果たすべきか」を主調テ−マに、「安全・安心」「説明責任」「情報開示と共有」「リスク・コミュニケ−ション」「未来への責任」の各セッションで講演が行われた。

初日には、松浦祥次郎・原子力安全委員長が「安全目標策定へのステップ」と題し、2日目には、近藤駿介・原子力委員長が「原子力政策における学会への期待」と題して、それぞれ講演を行った。

初日の斉藤伸三・日本原子力学会会長の開会挨拶に続き、「安全・安心」セッションでは、原子力を巡る安全と安心の問題について3件の講演が行われた。

「安全目標策定へのステップ」と題した講演で、松浦委員長(=写真左側)は、原子力安全委員会のこれまでの安全目標に関する取組みを紹介した後、安全目標策定に向けた課題として、性能目標(定量的目標を満足するように、原子力施設固有の事故事象の発生確率を抑制する目標)の検討、安全目標の適用に際しての課題の抽出・検討、リスク評価マニュアルの整備等、国民との対話の推進などを指摘した。

さらに社会への期待として、原子力以外の分野でもリスクの概念に基づく安全目標を積極的に取り入れるべき、社会のリスク・リテラシ−(リスク受容の理解度)の一般化を期待するなどの提言を行った。

糸魚川直祐・武庫川女子大教授は心理学の立場から「安心の探求」について講演し、「安心」という言葉は仏教から由来し、心の平和な状態を意味すると指摘。安心の反対の「不安」と異なり、心理学の研究対象となりにくいとしつつも、アンケ−ト調査等を分析しながら原子力の安全と安心の問題について論じた。

結論として、原子力に対する安心感の醸成には安全の確保が最大の要因であること、客観的に安全度が高くとも人−は安心しないことがあること、よく見えることが安心感の醸成に役立つことを指摘した。

広渡清吾・東大社会科学研究所教授は、「安全で安心な世界と社会の構築」と題した講演で、「安心」は宗教的領域に関わる問題であるが、科学技術の急速な発展を背景に、「安全と安心」の確保が国家の重要課題となっている。しかし安全と安心の乖離という問題があり説得と納得の関係が成り立ちにくいと指摘した。

また、牛海綿状脳症(BSE)対策での全頭検査は食肉の安全上は必要なく、消費者の安心を確保するための政策であるとの見解を紹介し、「絶対安全・ゼロリスク」という考え方には問題があるとした。


Copyright (C) 2004 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.