[原子力産業新聞] 2004年6月17日 第2239号 <2面>

[原研] JT−60 高圧プラズマ42秒を達成

 日本原子力研究所は11日、臨界プラズマ試験装置(JT−60)を用いて、国際熱核融合実験炉(ITER)で必要とされる高圧力プラズマを、世界最長の24秒間にわたり維持することに成功したと発表した。

 核融合炉の出力はプラズマ圧力(温度×密度)の2乗に比例する。そのため高い出力が求められるITERにおいては、磁場によって閉じ込められる高い圧力のプラズマを長時間維持することが大きな研究目標となっており、プラズマ圧力の低下をもたらす「磁場の乱れ」を起こさせないように、プラズマ中の電流分布に応じて、プラズマ中の圧力分布を適切な形に保つ必要がある。JT−60の場合、圧力分布が1秒程度で一定に落ち着くのに対し電流分布が一定に落ち着くまでには十秒程度の時間を要するなど、電流分布は圧力分布よりもゆっくりと変化する。これまで世界のどの装置においても、ITER相当の高圧力プラズマの維持時間が「電流分布が一定に落ち着く時間」に達しておらず、ITERの長時間燃焼(目標維持時間=400秒以上)において、電流分布が一定に落ち着くまでに電流分布の変化に伴って磁場の乱れが発生する可能性が懸念されていた。

 JT−60では昨年、制御系等を変更し、プラズマ加熱時間を従来の10秒から30秒に伸長した。さらに今年の実験において、これまでに開発したプラズマ加熱位置を調整する技術を駆使することにより圧力分布を最適化し、「磁場の乱れ」が発生しない圧力分布を実現。その結果、ITER相当の高圧力プラズマを「電流分布が一定に落ち着く時間」の2倍以上に相当する24秒間にわたり維持することに成功し、ITER相当の高圧力プラズマにおいて電流分布が一定となる定常状態を、世界で初めて実現した。

 今後さらに維持時間を伸長しても「磁場の乱れ」は発生しないと期待されることから、原研では今回の成果について、「ITERにおける長時間燃焼実験を先導し、その実現を確実にするもの」としている。


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