[原子力産業新聞] 2004年6月24日 第2240号 <2面>

[原産] 「人材問題報告書」ベースに 数種のプロジェクトが始動

 日本原子力産業会議の基盤強化委員会(委員長=荒木浩・東京電力顧問)の下に設けられた人材問題小委員会(委員長=鷲見禎彦・日本原子力発電社長)は、昨年6月、原子力発電所の保修に関わる人材育成・強化、および将来の人材確保を目指した教育・訓練のあり方について、報告書をまとめたが(本紙昨年7月24日、31日号参照)、その後1年間で、報告書で取り上げられた課題への取組みが始まっている。

 原子力発電所保修現場の班長や上級作業員に対して、原子力特有の技術・技能について、原子力産業界で共通の民間資格制度を創設しようとの構想については、電力九社と原電、メーカー、工事会社等がメンバーとなり、発電技検をオブザーバーとする検討会を原産に設置。5月末に第1回会合を開催し、具体的な制度設計作業を開始している。検討のベースとしているのは、原電の直営技量認定制度案。

 米国では、電力会社による原子力発電所保守・保修作業の直営化が進んでいるが、日本でも経験や情報の共有と連繋を進めるため、電力会社間の連絡会を定期的に開くこととなり、第1回連絡会が6月下旬に原産で開かれる。

 また、電力会社や発電所ごとに異なる管理手続きや運営ルールを統一する必要性が指摘されているが、これに向けて、統一モデルを作成、トップダウン方式での解決を図ることが検討されている。原産に作業会を設置し、統一ルールの具体例の抽出、メリットなどを評価することとなり、6月中旬に第1回作業会を開催した。

 米国では原子力エネルギー協会(NEI)が中心となって進めてきた、原子力発電所の維持管理に係わる作業プロセスの改善(ベスト・プラクティス)についても、6月に原産に研究会を設置、米国の事例を検討、わが国での適用可能性を検討する。

 現在、保修・点検作業が定検中に偏りすぎているなどの問題を解決するために必要な規制合理化は、電事連の委員会、および近い将来設立される予定の「原子力民間2団体」での検討が考えられている。

 産官学の研究・開発機関が、原子力教育インフラの情報をインターネット上で行い相互利用につなげる「原子力教育情報センター(NES-net)」については、ニーズ等を調べるため、昨年12月から今年1月にかけて、電力会社、メーカー、工事会社、研究・開発機関等、180社を対象にアンケートを実施。今年度中のインターネット・サイトの開設を目指す。


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